遠藤 僕にはそんな芸当はできませんが、違和感という話で言えば、スタッフさんに描いてもらった背景を見たときに、「パース(遠近法)の消失点がズレてるな」っていうのがぱっと見でわかることはあります。ただ、消失点が合っていれば違和感はなくなるかというと、そんなこともなくて。その辺は経験と感覚に拠ってくるのですが、それを言語化して相手に伝えるのは結構難しいです。
キャラクターと背景
描くのが難しいのはどっち?
勝丸 やはり、クリエイティブの分野は言葉にならない感覚がありますよね。私が言う「ゾワッ」を感じ取れるようにするにも、生まれ持ったものに左右されるんです。例えば車の運転って、すぐに上手になる人もいれば、どんなに乗っても下手なままの人がいます。それと同じです。
遠藤 たしかに、先ほど言ったパースも、感覚で捉えられる方と、そうでない方がいます。
勝丸 遠藤先生の場合は、最初から感覚的に備わっていたのではないですか。
遠藤 どうなんでしょう……僕の場合は経験の蓄積によるものも大きいと思います。
勝丸 普段からそういう感覚を研ぎ澄ませていくために、意識されていることはありますか。
遠藤 絵は、とにかく積み重ねるしかないのかな、と。手だけではなく、目も鍛えながら。背景の場合、ある程度ロジカルに描けるので迷走することは稀ですが、難しいのはやっぱりキャラクターですね。これ、という正解がないので。納得いくまで描き直そうとすると、ドツボにはまって抜け出せなくなることがよくあります。感覚(目)の方だけ研ぎ澄まされて、手がついてこないからだと思いますが。これは絵描きあるあるだと思います(笑)。