上海の人民公園 Photo:PIXTA上海の人民公園 Photo:PIXTA

中国・上海の人民公園では週末になると自然発生する「親の代理見合い」が名物になっている。公園に親たちが集まって、子どもの代わりに結婚相手を探すのだ。親たちはなぜ公園に通い続けるのか。筆者は数年ぶりに週末の人民公園を訪れこの名物イベントが徐々に様変わりしているのを目の当たりにした。少子化や高齢化、世代間ギャップ……ここには中国社会のさまざまな社会課題が凝縮されている。(日中福祉プランニング代表 王 青)

「親の代理見合い」が行われる上海の人民公園
自発的に始まった「婚活」が、名物イベント化

 中国・上海の中心にある「人民広場」の北側に、「人民公園」という公園がある。面積14万平方メートルと大きく、緑豊かで、上海市民の憩いの場として親しまれている公園だ。一方、この公園は週末になると別の顔を見せる。通称「人民公園相親角」(お見合いコーナー)と呼ばれる、「親の代理見合い」が開催される場となるのだ。

 2005年頃から自発的に始まった、親たちによる「婚活」は、今やすっかり上海の名物となった。当初は地元の親たちだけが参加していたが、次第にはるばる地方からも参加者が集まるようになり、国内外の観光客からも「見てみたい」と注目を集めるほど知名度が上がっていった。インフルエンサーがカメラを手に持って実況中継をしたり、マイクを持って歌を披露する人がいたりして、賑やかに盛り上がっている。おかげで今や、土日の人民公園はいつも大変な賑わいである。

 先日、天気が良く暖かな日曜日の午後に、久しぶりに人民公園を訪れてみた。地下鉄2号線の「人民広場駅」から地上に上がり、少し歩いて人民公園の五号門に近付くと、人の声が聞こえてきた。

 大勢の人たちをかき分けて公園の中に入ると、小道の両サイドには、緑地を囲むコンクリートの段差に座った多くの親たちが見えた。彼らの足元にはA4サイズ程度の大きさの紙が置かれており、そこには自分の子どもの生年月日や身長、学歴、収入、経済力といった情報が詳細に書かれている。中には、チラシを首から下げたり手に持ったりして歩き回る親もいた。

上海・人民公演に集まる親たち(筆者撮影)上海・人民公演に集まる親たち(筆者撮影) 拡大画像表示

 そんな親たちが、ざっと見て数百人はいる。一番目立つ見晴らしがいい場所は、地元・上海戸籍の親たちの領域になっている。奥に行くにつれて道が狭くなり、緑が茂ってうす暗くなっているあたりには地方出身の親たちが集まる。そこでは上海語の代わりに、各地の方言が聞こえてくるのだ。そして公園のもう一角、日当たりがよく広々としたスペースは「海外角」(海外コーナー)となっており、そこに置かれたチラシは全員海外在住者か、留学経験者のものだった。こんなところにも格差があるのだ。