チラシの書き方はほぼ統一
“傘に貼る”から“地面に直置き“に変わった理由

 チラシの内容は大抵似ている。例えば娘の場合は「女、上海戸籍、1989年9月生まれ、身長164cm、博士号取得、国営企業勤務、持ち家・車あり。希望する相手は身長175cm以上、学歴は修士かそれ以上、月収3万元(約60万円)以上。持ち家あり、心身ともに健康で、家庭に責任を持つ人」といった具合だ。息子の場合は「1991年生まれ、179cm、75kg。学歴は大卒、民間企業勤務。月収2万元(約40万円)、結婚用の110平方メートルのマンションを所有。希望相手は上海戸籍で5歳以上若く、身長160cm以上の容姿端麗な大卒女性」など、子どもの詳細と相手の希望条件が記載されていた。

チラシに書かれている内容は、子どもの詳細な情報と、結婚相手に求める条件(筆者撮影)チラシに書かれている内容は、子どもの詳細な情報と、結婚相手に求める条件(筆者撮影) 拡大画像表示

 中には「両親は公務員で定年、健康」と親の状況を書いたり、「単親家庭出身は不可」など、相手の親に求める条件を細かく示したりするチラシも多くみられた。印象的だったのが、上海戸籍の人たちは男女問わず、相手にも上海戸籍であることを求めていた点である。これは、中国では地域間の貧富格差が大きいのに、都市部と農村部や、都市間の戸籍が固定されており、自由に移籍できないためだ。

 以前、筆者が2019年に訪れた際は、チラシを直に地面に置くのではなく、開いた傘に貼り付けていたのだが、今回はそうした傘を見かけない。気になって公園の警備員に聞いてみると「以前、親同士で喧嘩になったときに、傘を武器にして攻撃する人がいたので、危険だから禁止した」からだそうだ。

5年前に人民公園に来たときに撮影した写真。当時はチラシを地面に直に置かず、傘を開いて貼り付けていた。(2019年、筆者撮影)5年前に人民公園に来たときに撮影した写真。当時はチラシを地面に直に置かず、傘を開いて貼り付けていた。(2019年、筆者撮影) 拡大画像表示

 一人なのに、何十枚ものチラシを並べている人もいた。話を聞いてみると、彼ら彼女らは「代理婚活業者」で、来られない親の代わりにチラシを扱い、興味がある人がいたら代わりに連絡先を教えるサービスを行っているのだという。料金は1枚150元(約3000円)/月で、20枚程度扱うと、月3000元(6万円)ほどの収入が得られるという。実質的にはただ公園で座っているだけなのだが、上海市の高齢者の平均年金4500元(9万円)からすると、かなりいい収入になる。

 こうした「親代理の婚活」は、上海だけでなく中国各地で行われている。親たちの多くは、子どもたちに内緒で公園に来ているのが実情だ。本人に許可を取るわけでもなく、娘や息子の学歴や収入、資産などの情報を公開しているようすは、婚活市場というよりは“物々交換市“に見える。