親世代は「子孫を残さないことは最も親不孝」と思い
子世代には「不婚不育」が拡大している

 なぜ親たちはこんな行動を取るのか、それは、「無後為大」(子孫を残さないことは最も親不孝)という中国の伝統的な家族観に起因する。しかも一人っ子政策のため、多くの家庭に子どもは一人しかいない。ここに来ている親の子どもは大抵一人っ子なのだ。

地面にチラシを並べている(筆者撮影)地面にチラシを並べ、座っている女性たち(筆者撮影) 拡大画像表示

 2019年から、人民公園の「親代理見合い」現象を考察調査し続けている上海大学社会学院の計迎春教授は、「中国の家族の関係は、実は世代間関係に埋め込まれている。親子の関係は非常に密接で、結婚は本人同士の問題ではなく、家系継承と存続に関わる大きな問題だ」と説明する。

「公園にいる親はほとんどが中流家庭で、農村出身者や低所得家庭は登場しない。中流層が求める結婚の条件は、ある程度社会全体の変化や価値観を反映している。例えば、男性側は、社会的地位や収入が自分より上の女性を嫌がる。男性は経済力が大事、女性は子育ての“機械”という考え方が依然として根強いためだ」(計氏)

 中国全体で見れば結婚適齢の独身男性は女性より3000万人多いと言われているが、都市部の婚活市場においては、女性の方が圧倒的に人数が多い。

 こうした背景に加えて、相手の愛情よりも経済状況を重視する拝金主義が中国の若者の間には広がっている(https://diamond.jp/articles/-/269407)。近年、中国の政治環境の変化や経済低迷により、若者が“生きる”環境が厳しくなっている。中国国家統計局によれば、2月、若者(16~24歳)の失業率は15.3%と1月より悪化した。高い失業率や将来への不安によって、結婚や出産に対して若者が消極的に、悲観的になっているのだ(https://diamond.jp/articles/-/339036)。SNSでは「自分さえ養えないのに、どうやって家族を持てるのか」「結婚は一番コスパが悪い」といった書き込みがあふれている。若者世代では、結婚や出産を控える「不婚不育」が大きなトレンドになっている。

 実際、2022年の婚姻件数は683万組と、10年前の約半数に減った。出生数も23年には902万人と1949年の中国建国以来、過去最低を記録。7年連続で出生数が減少中で、少子化が深刻である。

 親世代と子世代でこれほど価値観にギャップがあるのに、当事者不在の「親代理の婚活」に、効果はあるのだろうか。上述の公園警備員は「成功率は低いよ。数パーセントと聞いている」と話す。「でも、ここに来れば同じ境遇の人がいるから、精神的に救われるんじゃないかな」とも。