視点2
そこに生成AIが加わる

 つい最近、アップルがグーグルの生成AIのジェミニを次期iPhoneに搭載する方向で交渉中だというニュースが流れ、その日、グーグル株が5%以上も株価を上げました。

 生成AIの出現以降、世界の株式市場をけん引するといってもいいマグニフィセントセブンと呼ばれる7社のIT企業ですが、その筆頭ともいえるアップルは水面下で生成AIへの投資を進めているといわれる一方で、これまで発表するニュースはあまりパッとしませんでした。

 ChatGPTのオープンAIの主要株主であるマイクロソフトに時価総額で抜かれ、この先アップルはどうなるのだろうかという状況の中で飛び込んできたのが、このニュースでした。

 わたしはこのニュースは「とても微妙なニュースだ」と感じました。

 というのは、アップルが当面のところ生成AIに関して外部にすぐに発表できるほどの成果を出せていないことを白状したようなものだという理由がひとつ。次期iPhoneに搭載されるのが自社製品ではなくグーグル製品だというのですから、即戦力の製品が出てこないことを意味するわけです。

 一方で、もうひとつ微妙だと感じたのがPixelでiPhoneと競合しているグーグルがそれに応じたことです。

 消しゴムマジックではグーグルは自社ユーザーには無料、iPhoneユーザーには有料プランユーザーでしか消しゴムマジックを使えないという形で差をつけていて、それがPixelの躍進にも寄与していました。

 今回はグーグルにとっても一番重要な新サービスをライバルに提供するということで、違った経営判断になった様子です。

 この微妙な判断を解説すると、グーグルから見ればPixelのシェア以上にジェミニのシェアを上げたいということでしょう。世の中が今、オープンAIのChatGPT一強になりかけている時期で、それを止めることがグーグルにとっては何としても重要です。

 だとしたらジェミニをPixelのシェアを上げることに使うのではなく、最初からiPhoneに提供することで少なくともスマホの世界での生成AIシェアは業界トップに持って行ったほうが戦略としてはいいという判断でしょう。

 一方のアップルからしてもジェミニは苦渋の選択でしょう。

 なにしろ他に手を結ぶとしたらマイクロソフトが一番いい相手なのですが、過去のスティーブ・ジョブズとビル・ゲイツの確執を考えるとどうしても選ぶことは難しい。

 ということで当面はiPhoneとPixelに同じ生成AIが搭載される事態がまず起きるでしょう。そして問題はその先です。