視点3:ブランドの未来
アップル最大の弱点は「価格プレミアム」

 かつてソニーの創業者が「ソニーで一番重要な資産はSONYという4文字のブランドだ」と断言したことがあります。

 それと同じでアップルという会社はある意味で広義の電機製品メーカーの中で唯一「i」というブランド名を頭につけることで圧倒的な価格プレミアム(顧客があるブランドに対して他の製品より余分に払ってもよいと考えている価格の部分のこと)を実現した会社だと捉えることができます。

 もちろんiPhoneが性能的にも優れているところがあったことも事実ですが、他社と比べて優れている程度を上回る価格プレミアムを得ることができたことが、アップルの株価につながったこともまぎれもなく事実です。

 ここがアップルの強みであると同時に、最大の弱点です。

 スマホの世界で、iPhoneがオンリーワンのプレミアムであると消費者が認識しているからこそ確立していたのがiPhoneブランドです。

 仮に第一・第二の視点で提示をしたように、Z世代のスマホヘビーユーザーから見て最強の生成AIを搭載したPixelの方が圧倒的に優れたスマホであるという評判が確立してしまうと、ブランド価値のシフトが起きてしまいます。

 過去の歴史でいえばブラウン管テレビで圧倒的に画質の良かったソニーが、液晶テレビの時代になってシャープに抜かれるとか、一眼レフの世界で一強とでもいうべきキヤノンが逆に画像処理勝負になったことでソニーのミラーレスに最強の座を揺るがされるといった出来事が起きています。

 それと同じブランド価値のシフトがスマホでも起きる可能性があるのです。

 さて、話をまとめましょう。Pixelがスマホ市場でここわずか1年で10%のシェアを確保したのは、あくまで物語の始まりなのかもしれないのです。

 高性能のカメラと使い勝手がいい消しゴムマジックを武器にZ世代に売れているという現在地はあくまで通過点で、この先、iPhone超えという誰も想像していない未来が来る可能性がある。

 あくまで可能性だとはいえ、その未来への道がひとつのストーリーとしてつながっているという点は、アップルにとっては怖い未来だと私は思います。