金融市場の変化、円安の進行

 日銀の決定会合の少し前から、直後の金融市場の変化を振り返ってみよう。3月19日が近づく中、日銀幹部から、春闘における大幅賃上げや、物価安定目標の実現が見通せるといった発言が相次いだ。それに伴い、マイナス金利政策やイールドカーブ・コントロール、ETF買い入れなどが終了する見込みとの報道が増えた。日銀は、金融市場とのコミュニケーションを進めた。

 そして19日午後、決定会合の結果が発表されると、国債流通市場は落ち着きを保っていた。イールドカーブ・コントロールが解除されたことで、10年物国債の流通利回りは0.71%から0.73%にわずかに上昇した。決定会合で日銀は、引き続き月6兆円程度の国債を買い入れ、金利の急上昇を防ぐ考えを示した。それは、国債流通市場の安定を支えた。

 もう一つ注目されたのは為替レートだ。発表直後、瞬間的に円が買い戻され円高方向に振れたものの、長続きはしなかった。日銀が当面、金融緩和策を維持することが明らかになった一方、米国の利下げの回数が当初の予想よりも減少するとの観測が出て、日米の金利差はそれほど縮小しないとの見方が広まった。その結果、ドルが対円で買われ、円安の動きが加速した。

 3月19日、20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、物価と経済成長率の予想も上振れた。こうしたことから、日本国債よりも米国債の保有を有利と考える主要投資家は増え、むしろ円安・ドル高の方向に為替レートは動いた。22日、一時1ドル=151円86銭までドル高・円安が進んだ。

 他方、株式市場では、日経平均株価が史上最高値を更新した。円安の加速は自動車関連銘柄など輸出系企業の株価にプラスに働く。また、金融緩和政策の解除により収益改善への期待が高まった銀行株も買われた。総じて、円安の進行もあって短期的に日本株は買い増せると考える海外投資家が増えたとみられる。