マイナス金利政策の解除について、「3月19日の金融政策決定会合」がキーポイントとなりそうだ。日本銀行が注目しているのは、賃金の引き上げ幅が食料品価格などの上昇ペースと同じ水準あるいはそれを上回るか否か。その意味で、今年の春闘は重要だ。ただし、中小企業の事業環境は依然として厳しく、「人手不足」倒産も増えている。また、中国や米国経済の先行き不透明感も無視できない。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
賃金が物価を上回り消費を盛り上げるか
現在、わが国経済はインフレの状況にある。今年1月までの過去22カ月間、消費者物価指数(CPI)の総合指数、生鮮食品を除く総合指数ともに、前年同月比の変化率は2.0%以上だった。日本銀行も「経済はインフレ状況」との認識をしているようだ。
問題は、日常生活に必要なモノなどの価格上昇に、賃金の上昇が追い付いていないことだ。1月、食料の価格は前年同月比5.7%、乳卵類は同11.8%上昇だ。一般庶民の生活実感は改善していない。そのため、消費は盛り上がらず、景気の回復が進んでいない。
今後、賃金が物価を上回って上昇し、それが消費を盛り上げる好循環につながるのがベストシナリオなのだが、経済専門家の間でも厳しい見方が多い。
また、海外に目を向けると不透明な要素が多い。景気低迷が深刻な中国は、世界経済の足を引っ張る状況が続くだろう。世界経済のけん引役である米国も、徐々に減速する可能性もある。そうした先行きへの懸念が顕在化すると、日銀がマイナス金利政策の幕引きを行った後、わが国経済の足踏み状況が続くことも考えられる。