遺伝子レベルで老化の解明が進んでいる現代において、老いの常識は過去。堀江貴文が一流医師を取材して判明したのは、生命エネルギーを作るミトコンドリアは老化の根底に関わる細胞の超重要器官であり、ミトコンドリアの治療薬が健康長寿も叶えるということだった。本稿は、堀江貴文『金を使うならカラダに使え。老化のリスクを圧倒的に下げる知識・習慣・考え方』(幻冬舎)の一部を抜粋・編集したものです。
ミトコンドリアは
「身体のエネルギー工場」
病気や老化による機能低下の研究はさまざまな視点で行われている。東北大学の阿部高明教授が研究を続けているのは「ミトコンドリア」だ。ミトコンドリアは我々人間の身体を構成する約37兆個もの細胞、その一つひとつの中に数百~数千個も含まれていて、“エネルギーを産生する工場”とも言われている。近年、研究が進んでいる分野で、老化に伴う全身の機能低下や病気に関わることがわかってきているという。
阿部教授は、生命活動に必要なエネルギーである「ATP」のうち、95%を産生するミトコンドリアの簡便な診断法と治療薬の開発を行い、その機能を改善することで健康長寿を目指している方だ。阿部教授がプロジェクトマネージャーとなり進めている東北大学の「ミトコンドリア先制医療」は、医療分野の研究開発とその環境整備の役割を担う国立の開発機構「AMED(エーメド)」の支援を受けている。
そもそも、ミトコンドリアはどうやってエネルギーを作っているのだろう。
「細胞内では、食べた糖を分解してピルビン酸に変える『解糖系』でATPを2個産生し、次にピルビン酸が『TCA回路(サイクル)』(*)を回して1個産生します。このTCA回路ではNADHと水素イオンが作られ、NADHからは水素イオンが外れて老化や寿命を制御する酵素、サーチュインの活性化を行うNAD(ニコチンアミド アデニン ジヌクレオチド)が作られます」(阿部教授)
このミトコンドリアが機能低下する原因は老化だと言われているが、実際に何が起きているのかというと、ATPを作る際に酸素が消費され、その一部が細胞のダメージを起こす活性酸素に変換されている。ミトコンドリアは常にダメージを受けながらエネルギーを作っている状態なのだ。したがって長い年月、絶えず活性酸素にさらされることで、ミトコンドリアに機能低下が起こる。するとATPの産生が不足して細胞が弱り、病気へとつながっていく。
*TCA回路(サイクル)…ミトコンドリアの中で行われる9段階からなる代謝経路のこと