ミトコンドリアの機能維持を
サプリメントや薬で行える未来

 これは皆が気になることだと思うが、僕たち人間はどれくらい長生きできるのだろう。阿部教授はどう考えて研究しているのだろう。

「私の研究は“長生き”が1つの目的ではありますが、健康であることや、健康で長生きしているのに働く場がないとか、そういう社会的なところのケアも考える必要性があると思います。

 皆さん、それぞれが望む形の長寿を目指して、いろんなアンチエイジング対策を取り入れたり、効果が高いと言われるサプリメントに注目したりしているのだと思うのですが、一方で、その対策を継続すべきかどうかにも悩んでいる。それは、このサプリを飲んだら明日から健康になれるとか、前回の検査と比べて数値が良くなったという、しっかりした指標が得られないからではないでしょうか。本当に効いているのかどうかがわからなければ、継続しにくいでしょう。そのためには提供する側が、効果についてももっと深掘りをしなければならない」(阿部教授)

 確かにそうだ。わかりやすい基準を作って効果の確認ができることは、重要だと思う。

「ミトコンドリア病であれば体外診断用医薬品としてGDF15を測定する検査法はありますが、病院での検査は自費診療なので一般的ではありませんし、発症に至っていない人のミトコンドリアの機能が、どの程度低下しているかを判断できる値はまだわかっていません。ですが、MA-5は薬として使うと、動物に投与した場合では聴力低下や筋力低下など老化に伴う諸症状を緩和します。エネルギー不足が老化につながることは確実なので、我々もさらに研究を加速させ臨床応用にもっていきたいと思っています」(阿部教授)

 我々の生命活動に必要なエネルギー、ATPを作り続けているミトコンドリアの機能維持をサプリメントや薬で行える未来は、手が届くところまできている。