修道院はキリスト教の戒律のもと、共同生活をしながら修行をする施設。一般の社会から離れて、祈りと労働の日々をおくる。

 修道女たちは同じ環境で暮らし、同じ食事をとる。もちろん、酒もタバコもたしなむことはない。それなのに、寿命は一律ではないし、認知症を発症する人もいれば、無縁な人もいる。いったい、これはどういうことなのか。寿命と老後の健康に関連する要素は遺伝だけなのだろうか。

 ナン・スタディでは、修道女たちが20代のときに書いた日記や手紙などを入手し、どのような言葉が使われていたのかを克明に調べた。

 着目したのは「気の持ちよう」だ。日記や手紙のなかで、「幸せ」「楽しい」「うれしい」といったポジティブな言葉をよく使うグループと、「かなしい」「さびしい」「辛い」などのネガティブな言葉を多用するグループに大別。両者の寿命や健康状態の違いについて調査した。

 その結果、彼女たちが80歳以上になったとき、ポジティブなグループでは90%近くが存命していたことがわかった。一方、ネガティブなグループの人は34%しか生きていなかった。健康状態にも大きな違いがあり、ポジティブなグループには健康な人が多かったのに対し、ネガティブなグループの多くの人は病気に悩んでいた。

 同じ環境で暮らしても、気の持ちようしだいで寿命や健康状態にこれほどの差が出る。ものごとを前向きにとらえ、希望を持つことが長生きの大きな秘訣だったのだ。

老いは気から!
「若づくり」が長生きの秘訣だった

「若づくり」はどうにもイタい。年齢を重ねたら、年相応の格好をしなければいけない。こう思っている人は、年齢よりも若い髪形や服装をしている人に比べて、早死にする可能性が高いことを知っているだろうか。

「病は気から」といわれるが、どうやら本当らしい。「老いは気から」と言い換えてもいいかもしれない。このことを証明したのが、米国ハーバード大学による興味深い研究。年齢よりも若い格好をすると、心と体はどういった影響を受けるのか、というテーマで行われたものだ。