データ改ざん・会計不正は90年代から広まった「会社は株主のもの」が招いた最悪の事態写真はイメージです Photo:PIXTA

 大企業の不祥事が度々、報道されている。そこには目先の利益を追う企業の姿勢があると指摘するのは、米国クレアモント大学ピーター・ドラッカー経営大学院でMBAを取得し、経営コンサルタントとして活躍する國貞克則氏だ。企業の本来あるべき使命とは、そしてどう利益に結び付ければいいのか。朝日新書『財務3表一体理解法 「管理会計」編』から一部を抜粋、再編集して紹介する。

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利益だけを追い求めることの危うさ

 そもそも企業にとって利益とは何なのでしょうか。

 原価計算の基本的な方法を示した「原価計算基準」(1962年)の予算の定義の中には、「企業の利益目標を指示し」という言葉がありました。改正前の商法では、「営利を目的とする社団」は会社であるとされていました。経済学では「利潤最大化」という考え方が基本にあります。このようなことから、「企業の目的は利益をあげることだ」と思っている人が多いのではないでしょうか。

 さらに言えば、1990年代から「会社は株主のものである」という資本主義の考え方が日本にも色濃く入り込み、昨今の日本の経営者は、株主からの「短期利益の追求」というプレッシャーを強く受けてきました。

 しかし、利益自体を追い求めても必ずしも利益があがるわけではありません。日本には昔から「お金を追いかけるとお金は逃げていく」という言葉がありました。考えてみればすぐにわかることですが、利益とは、お客様がその企業の商品やサービスを選んでくれた結果としてもたらされるものです。

 その結果にしか過ぎない利益を性急に求めるから、追い込まれた従業員たちは不適切販売・押し込み営業・データ改ざん・会計不正などに走り、結果的に顧客や社会からの信頼を失うという最悪の事態を招くことになるのです。これが本書の「はじめに」で書いた、「どんな有効なツールでもその使い方を間違えば破滅に向かいます」ということです。