國貞 克則 (著)
定価957円(朝日新聞出版)
ドラッカーは、目標は自社の使命を果たすための行動の誓い(action commitments)であるとし、次のように言います。「目標は確実に達成できるとはかぎらず、むしろ方向性を示したものだといえる。命令ではなく方針なのだ。将来を決定づけるわけではなく、将来を切り開くために経営資源を動員し、熱意を引き出すための手段である」(※5)。ちなみに、この引用文の中にある「方針」という言葉も原書では、“commitments”です。
人が集まる組織においては、目標がなければ成果につながっていきません。企業の目的や使命は、目標がなければ単なるお題目で終わってしまいます。明確な目標があるからこそ、経営資源を動員し、人の熱意を引き出すことができるのです。
ちなみに、私が顧問を務める電子機器の販売会社A社は、ドラッカー経営学を全社員で学び実践したことにより業績がV字回復した会社です。A社が特に時間と労力をかけていたのは、マーケティングとイノベーションの活動です。顧客を知り尽くし顧客の期待以上の商品やサービスを提供し続けるための具体的な目標を設定し、それに基づく行動計画を立て、それを着実に実行していました。そのことがA社のV字回復の最大の要因でした。
※2 Peter F. Drucker “Management: Tasks, Responsibilities, Practices” Collins Business
※3 『企業とは何か』P・F・ドラッカー著、上田惇生訳(ダイヤモンド社)
※4 『マネジメント 課題、責任、実践』P・F・ドラッカー著、上田惇生訳(ダイヤモンド社)
※5 『マネジメント 務め、責任、実践』P・F・ドラッカー著、有賀裕子訳(日経BP社)
1961年岡山県生まれ。東北大学機械工学科卒業後、神戸製鋼所入社。海外プラント建設事業部、人事部、鉄鋼海外事業企画部、建設機械事業部などで業務に従事。1996年米国クレアモント大学ピーター・ドラッカー経営大学院でMBA取得。2001年ボナ・ヴィータ コーポレーションを設立。日経ビジネススクールなどで公開セミナーやeラーニングの講座を担当している。著書に『新版 財務3表一体理解法』『新版 財務3表図解分析法』(ともに朝日新書)、『渋沢栄一とドラッカー 未来創造の方法論』(KADOKAWA)、訳書に『財務マネジメントの基本と原則』(東洋経済新報社)などがある。
※AERA dot.より転載