燃焼性が高い「非常識で無礼な女」
いろいろな意見があろうが、筆者はこの女性が、数年前からSNS界隈で極めて燃焼性が高い「非常識で無礼な女」というイメージと見事にマッチしてしまったことが大きいと思っている。
実は筆者は7年ほど前から、ちょっとミスをするとSNSで袋叩きにされる昨今の不寛容な世相を、「ギスギス社会」と名付けて定点観測を続けていて、2018年には「週刊新潮」で(2018年11月1日号)には特集記事にもまとめた。
『新幹線でたこ焼きも豚まんも食べられない!?「不寛容」な「ギスギス社会ニッポン」』
この記事の中で、ギスギス社会の典型例のひとつとして取り上げたのが、「ベビーカーを押すママへの厳しい風当たり」だ。
17年1月、ベビーシッターマッチングサービスなどを運営するキッズラインが、子育て中の女性340人を対象に行った調査では、ベビーカー利用時に「嫌な思いをした」と回答したのは56.8%と半数以上となった。中には「ベビーカーを蹴られた」という耳を疑うような被害も報告された。
では、「ベビーカーを蹴る側の正義」はどこにあるのかというと、調べていくと、一言で言えば「非常識で無礼な女」を懲らしめることは悪いことではない、という思想に突き当たった。
SNSを見てみると「満員電車に大きなベビーカーで乗り込んできて注意したら何が悪いのかと逆ギレされた」、「ママ友が通路を並んでデカいベビーカーを押していて後に大渋滞ができて迷惑」など、社会人の一般常識的なマナーを無視した振る舞いに怒り、その「被害者」たちが、報復としてベビーカーママへの嫌がらせを正当化しているケースがかなりあるようなのだ。
双方の主張はさておき、筆者が注目したのは「非常識で無礼な女」に対してイラっとくる人が、男女問わず、かなりいるということである。そして、その傾向が年々盛り上がっているということだ。
そのわかりやすい例が、元タレントでYouTuberの木下優樹菜さんだ。
木下さんはお笑い芸人の藤本敏史さんと結婚、2人の子どもが生まれてからは「ママタレ」として幅広く活躍されていた。しかし、2019年秋に「非常識で無礼な女」というイメージがついたことで、一部の人たちからボロカスに叩かれるようになる。
木下さんの姉が勤務していたタピオカ店のオーナー女性とのトラブルで、木下さんが「事務総出でやりますね」などと、恫喝まがいの言葉を吐いたからだ。
23年8月、木下さんはインスタグラムで一部のユーザーの誹謗中傷に対して「一般人だからとか武器にしてくんな」と怒りをあらわにしている。つまり、「非常識で無礼な女」というイメージが一度定着した者は、足かけ4年にわたって石を投げ続けらなくてはいけないということだ。