日本人のモラルは変わらないが「武器」の破壊力は絶大
テクノロジーが進化しているので、何やら人間まで進化をしていると勘違いしている人が多いが、1940年の日本人と、2024年の日本人の国民性やモラルには実はそれほど大きな違いはない。
たった80年やそこらで人間というのは劇的に変わらない。うそだと思うなら、おじいちゃんやおばあちゃんたちに若い時の話を聞いてみたらいい。当時のイジメや嫌がらせ、マナー違反や軽犯罪など、当時も今も人がやっていることは、ほとんど変わらないのだ。
それと同じで2024年の不寛容さや個人攻撃の傾向は、実は80年前とほとんど同じだ。相手を痛めつける「武器」がSNSやAIに変わったというだけの話だ。
ただ、この「武器」の破壊力だけは格段に進歩している。これまで多くの人がSNSの誹謗中傷やフェイクニュースで心を壊されて、死に追いやられているのがその証左だ。
会ったこともない「非常識で無礼な女」が動画でイジられるのは見ていて痛快だろう。一緒になって叩いても、「自業自得」という思いがあるから、それほど罪悪感もないのだろう。
ただ、拡散や投稿をする前に一瞬でもいいので、この女性にも家族や大切な人がいることを考えていただきたい。「あれ?こっちも非常識で無礼なことしてない?」という自己矛盾に気づくのではないか。
(ノンフィクションライター 窪田順生)