当該部下を引き留めたい場合は、このあたりがラストチャンスになります。

 本人にとって魅力を感じられるポジションや報酬、労働環境などを用意して、組織が本人にどれほど期待しているかを具体的に示さなければなりません。

■第三段階「退職意思を固めた」

 残念ながらこの段階にまで至ってしまうと、引き留めはなかなか困難かもしれません。既に転職活動が相当進んでいる可能性が高いためです。具体的には、このような様子が見えているはずです。

・仕事に身が入らず、業務時間中もボーッとしていることが多くなった

・会議やプロジェクトチーム活動など、社内活動への積極性が低下し、関与のために割く時間やエネルギーが明らかに減少している

・遅刻が増えたり、有給休暇を限度ギリギリまで取得しようとしている

・これまでなんとなくつらそうな様子だったが、一変して晴れやかな表情をするようになった

書影『「部下の気持ちがわからない」と思ったら読む本』『「部下の気持ちがわからない」と思ったら読む本』(ハーパーコリンズ・ジャパン)
新田 龍 著

・自身が担当している業務に関して、マニュアルを作り始めた

・デスク周りに置いていた私物がだんだんなくなっていき、スッキリし始めた

 ただしながら、これらはあくまで一例であり、個々のメンバーの性格や状況によって異なる場合ももちろんあります。重要なのは、このような兆候によって「普段と何か様子が違う」と変化に気づけるくらい、あなたが日常的に部下に関心を寄せているかどうかです。

 さらには、変化が起きてから慌てて取り繕うのではなく、「最近どう?」「うまくいってる?」といった形で、普段のコミュニケーション機会を大切に活かし、積極的にかかわり続けることで、彼らとの地道な信頼関係を構築していくことが有効です。