管理職が部下とのコミュニケーションがうまくいかない理由の1つに、無意識に抱いている「大前提」がある。ブラック企業アナリストが、効果的な組織内コミュニケーションを実現する確実な方法を伝授する。※本稿は、新田龍『「部下の気持ちがわからない」と思ったら読む本』(ハーパーコリンズ・ジャパン)の一部を抜粋・編集したものです。
「自分が必要とされている」と
気づかせる機会を多く設ける
経営側として人を雇用する上でまず心得ておきたいことは、相手がどんな人物であっても積極的な(できれば、意中の人と同等程度の)関心を持つことです。
そうすれば自然と、「どうすれば良い関係性を築けるだろう……」「どうすればこちらに興味関心を持ってくれるだろう……」と意識して考えるようになるはずです。
そうなれば当然、こちら側から積極的に挨拶をしたり、挨拶の後にちょっと一言加えて会話しようと工夫したりするでしょう。それくらいの関わり方を意識し、少しずつ実践するところから始めてみることをお勧めしたいのです。
理想は、「自分の仕事が誰かの役に立っている」「自分が必要とされている」と気づかせる機会を極力多く設けることです。
実践は簡単です。仕事を任せてやり遂げてくれるたびに、「◎◎してくれてありがとう」「◎◎してくれて嬉しかった」と具体的に伝えるのです。
彼らが普段当たり前にやっていることが、周囲の誰かの役に立っていて、それが感謝されるという状態を顕在化させれば、たとえ任せている仕事が単純作業でもルーティンワークでも「やりがい」を感じられるきっかけとなるはず。
「あいつはお荷物な存在だ」という前提で捉えるから、問題行動が目に付いてしまう……というケースもあり得ます。メンバーは皆仲間という前提に立ち、どうしたら皆が心地よく働ける環境になるか、ネガティブな要素をひとつずつ解消していきましょう。
組織で大切なのは
「言える化」と「見える化」
効果的な組織内コミュニケーションを実現するには、どうすればいいのでしょうか。やるべきことはさほど複雑なものではなく、ごくシンプルな次の3点です。
・メンバーに関心を寄せる
・メンバーを承認する
・メンバーをサポートする
この3点を意識し、コミュニケーションを地道に取っていくだけでよいのです。
組織のエンゲージメントを高める上では「密なコミュニケーションが重要だ」とよく言われますが、これは単に「頻繁に会話する」という意味だけにとどまりません。
管理職自身が、個々のメンバーに対して積極的に強い関心を持ち、彼らのキャリアプランやライフプランまで把握した上で、日々の行動・言動を注意深く観察し、相手の個性や状況を踏まえること。そして、相手にとって受け容れやすく、また相手が意見を表明しやすい関係性を構築・維持することに他なりません。