「明日カルロス・ゴーンに会いにレバノン行かない?」ホリエモンの誘いに即答OKしたワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

中堅出版社・双葉社の若手社員にすぎなかった男は、3000万円の雑誌制作費を外部調達し、社内の反対の声を丸め込んでヒットを飛ばした。さらにはホリエモン(堀江貴文)やガーシー(東谷義和)など著名人の本を次々と世に送り出すことになる。情熱溢れる幻冬舎社長・見城徹の影響をモロに浴びながら、「死ぬこと以外かすり傷」とばかりにハードに生きてきた箕輪厚介が、来し方を振り返った。※本稿は、箕輪厚介『かすり傷も痛かった』(幻冬舎)の一部を抜粋・編集したものです。

「最初から負けは考えていない」
編集処女作でいきなり大ヒット

『ネオヒルズ・ジャパン』で奇天烈なヒットを飛ばしたことで編集部に異動することになった。1冊目に企画したのが出版界の革命児・幻冬舎社長 見城徹の『たった一人の熱狂』だ。

「書籍を作ったことがない人間が見城さんの本を作るなんて危険すぎる」「下手な仕事をしたら出版界で生きにくくなるぞ」と周りから散々言われた。意味が分からない。最初から負けることを考えて戦いにいく馬鹿がいてたまるか。

 伝説の編集者と作った僕の編集処女作は、累計12万部のベストセラーとなった。

 見城徹の五体からは爆発的なまでの熱狂がほとばしっているが、僕も発狂していた。20時間近くある取材テープを通勤電車など時間があればとにかく聞き込んだ。

 すべての発言を完璧に記憶して口を開けば見城徹のことばかり。ライターには「気が狂っている」と言われ、妻には「見城さんと結婚しろ」と言われ、まだ喋りだしたばかりの子どもは強面の男がテレビに出ると「ケンジョーサン」と言うようになった。

 しかし、大変なのは本ができたあとだ。営業部や宣伝部とチームプレイで売っていく。双葉社の他の社員にとって僕の熱狂など知ったこっちゃない。

 すると見城徹がみるみる怒り始めた。「遅すぎる!搬入日をあと2日前倒しにしろ!」「幻冬舎の流通を使え」。双葉社は無理だと言う。それは当然だ。通例で考えたら無理なことばかり。僕は板挟みになりながらそれを伝えると「箕輪、よく聞け。無理はなあ、通すためにあるんだよ!」と一蹴された。僕はその言葉に痺れた。そしてその瞬間に見城徹のいる幻冬舎へ行かなければダメだと思った。

 与えられた仕事を段取りどおりにこなす。そうすれば失敗しても大きな傷は負わないだろう。しかし、そんな予定調和からは何も生まれない。

 無理と言われたら突破する。ダメだと言われたら強行する。僕は半ば意識的に予定調和を破壊する。ありえない日程で出版まで駆け抜ける。イベントをドタキャンする。泥酔状態で偉い人との会食に行く。

 社会不適合者だと後ろ指をさされても、これでいいのだ。いや、こうでもしないと、周りも自分も弛緩してしまう。いつ刺されるか分からないから危機感が生まれ、どこに宝が埋まっているか分からないから血が沸くのだ。ギリギリの綱渡り。どっちに転ぶか危うい状態でなんとか落ちずに走り続けろ。そうやって初めて鮮やかな結果が出る。