ベストセラー編集者・箕輪厚介が「飲み会なんて行かずにSNSを見ろ」と断言する理由尾原和啓氏(左、撮影:的野弘路)、箕輪厚介氏(右)

『死ぬこと以外かすり傷』の著者で編集者の箕輪厚介氏が、9月15日に『かすり傷も痛かった』と『怪獣人間の手懐け方』を2冊同時刊行。『怪獣人間の手懐け方』は発売前の段階で累計2万5000部を突破し、早くもベストセラーになるなど注目を集めている。本の刊行を記念し、箕輪厚介氏と『プロセスエコノミー』の著者でIT批評家の尾原和啓氏が行った対談の模様を、前後編でお届けする。

「怪獣人間」と働く時代の到来

尾原和啓氏(以下、尾原):5年ぶりの新著、『怪獣人間の手懐け方』『かすり傷も痛かった』ということで、今日はありがとうございます。

箕輪厚介氏(以下、箕輪):こちらこそありがとうございます。

尾原:この2冊は、箕輪さんに興味を持っている人でも傾向の違う人が読む本だと思いました。なので2つの方向性の読者に広く届くと思います。

箕輪:確かに。

尾原:2冊同時に出版する意味のわからなさにもツッコみたいのですが、実際に出してみていかがですか?

箕輪:『怪獣人間の手懐け方』はビジネス書ですから、仕事をしている人なら、誰でもどこかしら自分のプラスになるものがあると思います。

 一方で『かすり傷も痛かった』はエッセーです。作家ではない人がエッセーを書いて初版8000部で、発売前重版して1万2000部はあり得ないので、普通に珍しいですよね。

尾原:そうですよね。『怪獣人間の手懐け方』は、ソーシャルによって個人が「怪獣人間」に近づいて一緒に何かができる時代になったから、このような本がみんなの憧れになった気がします。

箕輪:それはいい指摘ですね。この本は、2周前くらいのブラックでアナログ的なコミュニケーションの話なんです。

 でも、なぜ今みんなが読もうとしてくれるかというと、SNSによって、本来関係ない世界の人たちとワンチャン仕事をする可能性が出てくるからです。距離は縮まっていないんだけど、くじ引きのように「怪獣人間」に関わるチャンスがあるかもしれない。

 ソーシャルで気に入られると急に壇上に上げられるけど、ほとんどの人は「君はまだ早かったね」と言われて消えてしまいます。その人たちに向けた、ヤバい人やすごい人の説明書がなかったというのはありますよね。

尾原:そうなんですよね。くじ引きって、引くまでの準備ができている人間でないと当たらないし。

箕輪:本当にそうですよね。

尾原:この本がすごいのは、SNS全盛期だけど、ワンチャンをたぐり寄せるために、箕輪さんが泥くさい努力をどれだけやっているかという話もあるし、階段がものすごく丁寧なところです。

箕輪:そもそも、この本の担当編集者が普通の感覚の人だったんですよ。その人から「なんで怪獣人間に近づかなきゃいけないんですか?」と聞かれて、「おもしろいからでしょ」と思ったけど、「普通の感覚だと、おもしろくても近づきたいと思わないんだ」と気づきました。

 だからステップ的にそこをかみ砕いて書かないと、「そもそも近づきたくないし」で終わるなと思ったんですよね。