YouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」で、メンタルの病気について発信し続けている、早稲田メンタルクリニック院長の益田裕介氏。インタビュー第4回では、精神科における「気分」と、自己肯定感の関わりについて聞いた。本記事では、『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』(キム・ダスル著、岡崎暢子訳)の発売を記念して、メンタル不調にどのように気付き、対処していくのが良いのかについて具体的な対策を聞いた。【第1回、第2回、第3回、第4回の記事はコチラ】
メンタルの不調に気付くには「5分間マインドフルネス」
――自分の不調に気付くにはどうしたらいいのでしょうか
益田裕介(以下、益田) 一番いいのはマインドフルネスです。目を閉じてゆっくりとした深呼吸を5分間続けられるかどうかが指標になります。例えば、嫌なことを考えて呼吸が浅くなったり、「こんなの馬鹿らしくてやってられない」と思ってやめてしまうことも含めて、まずは5分間マインドフルネスを続けられるか試してみてください。
――マインドフルネスを5分間以上できない人とはどのような状態にあるのでしょうか
益田 トラウマがよみがえって、自分を責めちゃうとか、嫌な記憶についてのフラッシュバックがある人が多いです。「あのとき、あんなこと言わなきゃよかった」みたいな感じで、パッと目を開けちゃったり、苦しくなって呼吸が浅くなってしまうなどです。
――5分間であれば意外と簡単そうな感じがします
益田 こう聞くとできそうな感じがしますが、メンタル不調の人はできない人が多いんです。患者さんは、大体嫌なことを思い出したり、「こんな無駄なことやってられない」と思ってしまいます。音楽を聴きながらとか、湯船に浸かったり、サウナに入っているあいだではなく、まずはお部屋でやってみてください。
――マインドフルネスができるかどうかで何が分かるのでしょうか
益田 自分と向き合えるかどうかが分かります。健康な人だと、マインドフルネスで自分と向き合って、思い出の世界に浸ったり、やるべきことを整理したりできます。目を閉じて座禅を組んで、基本は呼吸に集中してというように。ちょっとくらいは嫌なことも頭に浮かぶんだけど、呼吸に集中し直してみたいな。
――まったく「無」になるのも難しいような気がします
益田 お葬式でお坊さんのお経を聞いてるときと一緒なんです。お経のときに、自分の好き勝手考えてたらダメじゃないですか。かといって、お経のことばっかり聞いてるのもちょっと退屈。だから、思い出に浸ったりとか、この後どうしようかなとかを考えたりしますよね。
メンタル不調のときにするべき4つのこと
――5分間マインドフルネスができない場合はどうしたらいいのでしょうか。
益田 5分間マインドフルネスができない場合は、①休んで、②助けを求めて、③相手の言うことに従って、④自己肯定感を高めることをが良いと伝えています。助けを求めるというのは、自分で考えるんじゃなくて、信頼できる人の言うことを聞いてみるということです。信頼できる人というのは、例えば関係が良好な家族や、信頼できる上司などです。その人たちの言うことを愚直に守るって意外と大切なんです。
――助けを求める相手がいない人はどうしたらいいですか?
益田 そういう場合は、やっぱり精神科に来てもらうのがいいでしょう。それ以外だと福祉関係の方に助けを求めるのもいいです。でも、助けを求めるのってセンス結構センスがいるんです。だから、助けを求めるセンスが悪い人はなかなかよくならない。助けを求めるセンスがいい人は、適切なタイミングで適切な人に助けを求めれるから、不調が治るのも早いんです。
――逆に、5分間以上マインドフルネスができる方はどうしたらいいでしょうか。
益田 5分間以上マインドフルネスをできるんだったら、「学び」と「向き合い」が大切です。学びとは、倫理や科学など、人生をどう生きるかの基礎となる学び。「向き合い」は、自分の生い立ちや、今抱えている問題、そして何のために生きるのかという問いへの向き合いを意味します。是非心がけてみてください。
(取材・構成 書籍編集局 工藤佳子)