半地下はまだマシ──。

 そんなキャッチコピーが売りのサスペンス「ビニールハウス」もヒット中。ホラー映画「スリープ」(6月28日公開)はポン・ジュノの助監督を経てデビューした新鋭ユ・ジェソンの監督作で、脆くて危うい人間の心を幸せな夫婦を通して描く。

 韓国現代史の闇に向き合った「ソウルの春」(24年公開)は、この2月までに韓国で1312万人を動員した大ヒット作だ。「リバウンド」(4月公開)のような熱血スポ根ドラマも得意とするところだし、「マイ・スイート・ハニー」(5月公開)のようなロマンティックコメディーも楽しい。「情」と「恨」が深く息づいた韓国映画はやっぱり強い。

 映画評論家の暉峻さんは、

「安定感がある分、意外性がなくなった」

 と苦言を呈しつつも、

「韓国は世界で映画を作るのが当たり前になってきた」

 と新たな兆しを指摘する。現在公開中の韓国人移民の物語「パスト ライブス/再会」は、今年の米アカデミー賞で作品賞、脚本賞にノミネートされた米韓合作映画で、セリーヌ・ソン監督は韓国生まれ。本作にはグローバルなキャストとスタッフが集結した。20年の「ミナリ」とともに「韓国人の思いを伝える映画」(暉峻さん)に仕上がっている。(フリーランス記者・坂口さゆり)

AERA 2024年4月22日号より抜粋

AERA dot.より転載