欧州中央銀行(ECB)本部で、ユーロ圏の金融政策に関する記者会見するクリスティーヌ・ラガルド総裁=6月11日、フランクフルト・アム・マイン Photo:AFP=JIJI
ECB(欧州中央銀行)が2023年9月以来となる利上げに踏み切った。イラン情勢の緊迫化でエネルギー価格が上昇し、世界的にインフレ圧力が高まる中、主要国中央銀行の中でいち早く利上げに転じた。ただ、今回の物価高はロシアのウクライナ侵攻後とは様相が異なる。物価動向、景気回復の持続性を検証し、追加利上げの行方を読み解く。(第一ライフ資産運用経済研究所 首席エコノミスト 田中 理)
主要先進国中銀に先鞭をつける
ECBの利上げ開始
イラン情勢の緊迫化によるインフレ圧力の高まりを受け、ECB(欧州中央銀行)は6月11日に終わった理事会で2023年9月以来となる利上げを全会一致で決めた。
これにより、下限の政策金利(預金ファシリティー金利)は2.25%と、ECBが考える中立金利(景気を過度に過熱も抑制もしない政策金利の水準)の上限に達したことになる。
イラン戦争がユーロ圏の中期的なインフレ率や経済成長率に及ぼす影響の全容は、エネルギー価格に対するショックの深刻さや継続期間、それらが他の物価に波及する度合いによって左右される。
理事会後の記者会見では、今後の利上げ継続や追加利上げの判断材料などに関する質問が相次いだ。
イラン情勢の今後の展開に関する不確実性の高さに鑑み、ラガルド総裁は、特定の政策金利の経路を事前に約束することを避け、「今後発表される経済・金融データ、基調的なインフレ率の動向、金融政策の伝達メカニズムの有効性などに基づいて、理事会毎に適切な金融政策スタンスを決定する」方針を強調した。
ラガルド総裁は3月の講演での発言を引用し、「今回の引き締めは、大幅で持続的なインフレショックに対応した強力かつ持続的なものではない」との認識を示した。
また、今回の利上げが、既に入手している情報から正当化され、想定される全てのシナリオの下で妥当であるとの見解を示し、予防的な措置であるとの見方に反論した。
次ページでは、ユーロ圏経済の現状を検証しつつ、ECBの金融政策の先行きを予測する。







