黒田東彦の世界と経済の読み解き方4月29日、FRB議長としては最後となるFOMC後の記者会見に臨むジェローム・パウエル氏 Photo:Anna Moneymaker/gettyimages

FRB(米連邦準備制度理事会)議長が5月、ジェローム・パウエル氏からケビン・ウォーシュ氏に交代した。前日本銀行総裁の黒田東彦氏が執筆するダイヤモンド・オンラインの連載『黒田東彦の世界と経済の読み解き方』の今回のテーマは、「パウエルFRBの功績」。黒田氏が振り返るパウエル氏との思い出や、FRB議長としての働きぶりとは?

FRB議長を2期8年務めたパウエル氏
ラガルドECB総裁や筆者との共通点

 ジェローム・パウエル氏が、2018年2月から2期8年務めたFRB(米連邦準備制度理事会)議長を今年5月に退任した。私は13年3月から23年4月まで日本銀行総裁を務めたので、パウエル氏とは5年間ほど、中央銀行総裁としてBIS(国際決済銀行)総裁会議やG7(先進7カ国)、G20(20カ国・地域)の会議で顔を合わせた。

 あるBIS総裁会議の際、パウエル氏とクリスティーヌ・ラガルド・ECB(欧州中央銀行)総裁と3人で話す機会があり、3人とも法律家であることが話題になった。

 パウエル氏は米プリンストン大学を卒業して米ジョージタウン大学法科大学院で法務博士号を取得し、弁護士として活動した後に金融界で活躍し、FRB理事や議長になった法律家である。

 また、ラガルド氏は、フランスのパリ第10大学(現パリ・ナンテール大学)とエクス=アン=プロヴァンス政治学院を卒業した後は、米シカゴの巨大弁護士事務所ベーカー&マッケンジーで会長まで務め、フランスの経済財政大臣やIMF(国際通貨基金)の専務理事を経てECB総裁になった法律家である。

 一方私は、東京大学法学部在学中に司法試験に合格したものの、法曹の道には進まず、大蔵省(現財務省)に入省。その後、アジア開発銀行総裁を経て日銀総裁になっただけの法律家であった。

 このとき、三者で大いに議論になったテーマがあった。