昨年、日本で公開された「星くずの片隅で」や「毒舌弁護人」、今年1月公開の「燈火(ネオン)は消えず」などはいずれも香港でヒット作となっている。

 大陸に深入りすることを警戒するのは台湾も同じ。暉峻さんは、台湾映画の近況について、

「台湾人のアイデンティティーを求める映画が多くなっている」

やっぱり強い韓国映画

 台湾では80年代から90年代にかけて、当時の若手監督を中心に社会をより深く掘り下げた作品づくりを目指す「台湾ニューシネマ」運動が起こった。台湾庶民の生活に焦点を当てて人間の心の機微を丁寧に描いたり、伝統的な家族を通して台湾を見つめたり。ホウ・シャオシェンやエドワード・ヤン、アン・リーといった監督たちの作品は日本やヨーロッパで人気を博し、国際映画祭でも高く評価された。そこから連なる「台湾映画のレベルは今も高い」(暉峻さん)。そんな台湾映画も15年に「紅い服の少女」がメガヒットして以降は、ホラー映画が新しい潮流になっているという。

 アジア映画の最近の面白い傾向は、「中年以降の女優が牽引する傑作が増えてきた」(暉峻さん)ことだ。9月公開の台湾映画「本日公休(原題)」も、その一本。理髪師である自身の母親に着想を得て、フー・ティエンユー監督が撮ったヒューマンドラマで、人との繋がりを大切にする母親の姿が胸に沁みる。

 世界の目がアジア映画に向いたのは、韓国映画の力が大きい。今年も続々と日本で公開されており、関係者の中には「邦画をしのぐ勢い」と言う人も。アクションからサスペンス、ラブコメ、青春、ファンタジーとジャンルは様々で、しかも質が高い。