「拷問受けるリスクを知りながら脱北者を送還」
人権団体が中国政府を批判

 米国に不法入国できても、亡命申請が棄却されるケースもある。中国政府が亡命申請を棄却された中国人を引き取ろうとしないとの批判もある。帰国しなければならないはずの中国人不法移民のパスポートが本国から発給されず、帰そうにも帰せない事例も多いという。

 一方、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は昨年10月、中国が同月に500人以上、8~9月に計120人の脱北者を北朝鮮に強制送還したと批判する声明を発表した。HRWは9月には、他団体や国連の元北朝鮮人権状況特別報告者キンタナ氏らとの連名で習近平国家主席宛ての公開書簡を送り、脱北者が強制送還されれば拷問や拘束のリスクにさらされると国連調査委員会の報告書で指摘されているのに中国は脱北者の恣意的拘束を続け、送還の機会をうかがっていると批判した。コロナ禍の終息で鎖国状態を続けた北朝鮮が再び国境を開いており、さらなる強制送還の懸念も高まっている。HRWは、中国が脱北者を経済移民とみなして自国への亡命や定着を認めていないとし、難民の地位を認めるか、せめて韓国への安全な移動ができるようにすべきだと要求している。

ソン・ジュンギ主演の映画は
Netflixで全世界1位に

 折しも、脱北者役を人気俳優ソン・ジュンギさんが演じたNetflix(ネットフリックス)配信の韓国映画「ロ・ギワン」が各国でヒットしている。ソンさんは日本でもヒットしたドラマ「トキメキ☆成均館スキャンダル」や「太陽の末裔」にも出演した実力派。今回は北朝鮮から脱出した後、中国・延吉に隠れて暮らす脱北者ギワン役を好演した。目の前で起きた交通事故で母親を失い、その遺体を売った金でベルギーに向かい、生活苦にあえぎながら難民認定を目指す。やがて現地で出会った韓国人女性と恋に落ちる……というストーリーだ。公開2週目にNetflixの全世界ランキングの映画(非英語)部門で1位となった。苦難の末に難民申請を勝ち取って米国に定着した脱北者からは「まるで自分のストーリーのようだ」と共感の声も上がっている。