次に「解毒」です。必要なのは社内関係者の処罰です。賃金条件を正しく説明しなかったのは誰なのか、社宅の改築を放置していたのは本当は誰なのか。きちんと調査結果を公表し、責任者に厳罰を与えない限り、入社辞退者とその保護者の怒りは収まりません。「解毒」はそこまでしなければならないのです。
そして「再生」。社宅が改善され、納得のいく賃金条件が提示され、多くの辞退者が復職し、社内の処分がハッキリした段階で、初めてこの危機管理は完成します。
外部に頼ってもいい
一刻も早く真摯な対応を
そこまですれば、ちゅ~るの安全性を疑っていた消費者も納得することでしょう。さもなければ、何かのきっかけで「いなば存亡の危機」が起きないとも限りません。安全性への疑念が爆発すれば、不買運動やCM中止という動きに発展することは間違いありません。
そうこうしているうちに、「女帝が愛猫を何匹も飼ってはネグレクトしている」など、文春にはどんどん社員の告発が流出しています。この状況を見る限り、現経営陣では「危機管理」への対応はおぼつかないと言わざるを得ません。これは外部の力で改革するほかないかもしれません。
さて、『週刊文春』の皆さん。 まだまだやることはあります。そのひとつが、就職エージェントの責任追及です。たとえば、(1)いなば食品をはじめ企業の採用条件をよく調査せず鵜呑みにして人材募集をしていないか、(2)自社を経由していなば食品を受験した学生のフォローはしているのか(他の就活先の相談など)、(3)来年もいなば食品の採用広告を掲載するつもりなのか、といったことです。
これは、就職エージェントにとっても痛い追及になると思います。そして、「来年の採用広告は掲載しない」という業者が出てきたら、雪崩を打ってそれに倣うエージェントが増えるでしょう。学生はそうした行動をとるエージェントを安心して使うようになるからです。そうなれば、いなば食品はハローワーク中心の新卒募集しかできません(ハローワークは公的機関なので、もっと厳しい措置をとるかもしれませんが)。
ここまでの事態になれば、いなば食品社内で自発的に浄化運動が起こる可能性もあります。文春の後輩たちには、入社辞退者のためにも、商品の安全性も含めて、引き続きこの問題を追及してほしいと思います。
(元週刊文春・月刊文芸春秋編集長 木俣正剛)