「昔は昔」でいい
「今は今」でいい

 家族の絆というのは、昔と今ではどのように違っているのだろう。

 今は、僕らの世代が生まれ育って、養った家族の絆とは、明らかに違った絆で結ばれているようには感じます。

 今はスマホを介して、外出していてもお風呂を適温の湯で満たし、帰宅してすぐに入浴してサッパリできる。

 お母さんは自分の帰宅が遅くなるとき、早めに帰宅する家族のために、お風呂の湯を沸かす心遣いができる。

 学校や、仕事から帰った家族が、「お母さんが沸かしておいてくれたのか。ありがたい」と、その気遣いに心を和ませるでしょうね。

 そこでの親子の絆は、ちゃんと成立しているのでしょう。

 うーん、でも何かが足りないんだよな、と1940年生まれの僕は、自分の子供時代を振り返って思ってしまいます。

 あの時代にあって、今はないものって何だろう?この答えは、簡単なようで意外と難しいものです。

 今は何でもある。では昔はなくて、今はあるものは何か。

 そんなものは、とめどなくあるでしょう。ただ最も大きく生活を変えたテクノロジーは、インターネットだと言ってしまえば、話はそれで終わってしまいます。

 僕が子供の頃のお風呂の話をしてみます。僕は、中学1年生のときから現在地に住んでいるのですが、そのときはまだ水道は完全に引けていなくて、井戸水でした。

 ですからお風呂を沸かすには、井戸の水を汲み上げて、風呂桶に入れなければならなかった。井戸は屋内の台所にあって、ポンプの柄を上下させて汲み上げるものでした。

 土曜日曜は内湯で、他の曜日は銭湯に行くのが我が家の習慣でした。汲み上げるのは父の仕事で、根気強く汲み上げなければならないので疲労もしてくる。