その原因には野崎氏が残したとされる「遺言書」が挙げられる。報道によると、野崎氏が遺した遺言書は、「A4用紙1枚に、赤いサインペンで記されたもの」だった。自身と会社の全財産を、田辺市に遺贈するという趣旨が書かれていたのだ。日付は野崎氏が亡くなる約3カ月前の、18年2月8日だった。
遺族は遺言書の無効を求めて
「遺言無効確認訴訟」を提起
野崎氏が遺した遺言書には、「個人の全財産を田辺市にキフする」と書かれており、いわゆる自筆証書遺言だった。寄付先とされた田辺市は、裁判所で遺言書の「検認」という手続きを進め、この遺言書は「有効である」との判断を得ている。その後の遺産調査などで、田辺市はすでに2億円近い予算をかけているらしい。
しかし、野崎氏の兄弟ら親族は、この遺言書は無効であるとし、訴訟を提起した。「遺言無効確認訴訟」である。この訴訟は、遺言書の無効を裁判所に認めてもらうための訴訟である。
では、なぜ検認によって認められた遺言書を巡り、親族は訴訟に踏み切ったのだろうか。
兄弟姉妹に遺留分はないが
法定相続なら認められる
野崎氏には、逮捕された元妻との間に子はいない。また、兄弟姉妹が6人おり、訴訟に臨んでいるのは4人という報道がある。仮に田辺市への財産の全額遺贈が決定しても、配偶者の立場であれば遺留分を請求できる。だが、兄弟姉妹には遺留分はなく、財産を相続することができないのだ。
しかし、遺言書が無効ならば、法定相続分に沿って相続手続きが行われるため、配偶者は4分の3、そして兄弟姉妹は4分の1を受け取れる。
遺産を13億5000万円と仮定すると、兄弟姉妹には約3憶3750万円、仮に兄弟姉妹6人で分割すると、1人あたり約5625万円が相続できることになる。