「紀州のドン・ファンの遺言」を親族が認めないワケ、“自筆遺言書”に潜むリスクとは?2018年5月に亡くなられた和歌山県の会社経営者 野崎幸助氏には、預貯金・有価証券など総額約13億5000万円の遺産があったとされている。写真は野崎氏の自宅 Photo:SANKEI

紀州のドン・ファン事件を覚えているだろうか。2018年5月に亡くなられた和歌山県の会社経営者 野崎幸助氏(享年77)には、預貯金・有価証券など総額約13億5000万円の遺産があったとされている。この遺産には、遺言書があるとされており、その内容は「全額を田辺市に寄付する」というものだった。遺言書の形式は、A4のコピー用紙のようなものに手書きで書かれているものだったようだ。このような自筆遺言はトラブルの温床とも言われており、現在、法務省は遺言書の「デジタル作成」に向けて準備を進めている。そこで、今回はデジタル遺言書をテーマに、骨肉の争いを防ぐ遺言書の書き方を考察する。(税理士・岡野相続税理士法人 代表社員 岡野雄志)

紀州のドン・ファンが残した
「遺言書」とは

 2018年5月24日に亡くなった、和歌山県田辺市の野崎幸助さんは、「紀州のドン・ファン」と呼ばれる豪快な方だった。さまざまな事業を手掛け、鉄くず拾いから大富豪へとのし上がったが、残念なことに不慮の死を遂げている。元妻が逮捕されるなど、センセーショナルな事件だったこともあり、死因などに注目が集まった。元妻の初公判は5月10日に予定されている。

 実は、この事件の陰で、野崎氏を巡る遺産相続の争いも起きていることはご存じだろうか。

 野崎氏は資産家であり、一説には30億~50億円とも言われる遺産があるとされていた。実際には債務もあり、現在遺産相続をめぐって、親族が争っているのは約13億5000 万円だそうだ。それでも驚く金額の遺産だ。では、なぜ今「紀州のドン・ファン」の遺産を巡って、親族は争いを繰り広げているのだろうか。