“争族”は遺言書がない場合の遺産分割協議で起こりやすい。逆に言えば、遺言書があり、内容に問題がなければ遺産分割協議を行う必要はないのだ。争族を防ぐためにも遺言書は残しておきたい。特集『相続&生前贈与 65年ぶり大改正』の#12では、家族を不幸にしない遺言書の「正しい書き方」を押さえておこう。(ダイヤモンド編集部 山出暁子、監修/税理士法人弓家田・富山事務所代表社員、税理士・弓家田良彦)
遺産分割協議は遺言書がないとき実施
遺言書があればその通りに遺産を分ける
自分自身の財産をどのように分けるかは、基本的に本人の自由だ。それを決められるのが遺言書であり、相続の際、遺言書がある場合は、遺言書の通りに遺産分けが実行される。遺産分割協議が行われるのは、あくまで遺言書がなかった場合で、“争族”に発展するケースも多い。残された親族のためにもきちんと遺言を残すことが大事なのだ。
遺言書は“絶対”であるため、遺言書があればその通りに遺産分割すればよいのだが、注意しなければならないのは「遺留分」だ。
遺留分は、一定範囲の相続人に対して最低限相続できる財産を保障する制度だ(本特集#7『相続手続きの基本・早わかり4大ポイント!相続税額はどう計算?10カ月でやることは?』参照)。
遺言によって遺留分を侵害された相続人が、遺留分を侵害している人に対して相続開始日(遺言の内容を知った日)から1年以内に「遺留分侵害額請求」を起こした上で、遺留分に相当する遺産を取り戻すという流れになる。
別の言い方をすれば、遺言は絶対であるため、たとえ相続人のうち誰か特定の人に偏って財産を多く残すことが書いてあっても、遺留分を侵害しない限り、その内容が優先される。
また、相続人ではない第三者、例えば自分を介護してくれた長男の妻などに財産を残す内容が記載されていたとしても有効になる。
注意したいのは、遺言書内に書かれている財産を相続する人が、相続人のみのときだ。この場合、相続人全員の合意さえあれば、遺言書の内容を覆すことができる。
例えば、親の「財産はこう分けてあげたい」という思いと、子供たちの「こうしてほしかった」という思いにずれがあった場合にはこれが起こる可能性がある。
次ページでは、遺言書の種類によるメリット・デメリットや、「正しい書き方」について解説する。