遺産の分け方に故人の思いを反映できる遺言書。自筆遺言書は簡単に作成できるという利点がある一方で、遺言書が無効になってしまったり、紛失や偽造などのトラブルを招いたりすることも少なくない。特集『「普通の家庭」が一番危ない!相続完全ガイド』(全14回)の最終回では、相続専門税理士の橘慶太氏が遺言書を巡るトラブルを避けるためのテクニックを伝授する。
日付なし、夫婦で共同、ビデオレター…
自筆遺言書「無効」の三大パターン
一般的に活用されている遺言には大きく自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類があります。
自筆証書遺言とは、その名の通り、遺言の内容を自筆で書きます。
最大のメリットは簡単に作れること。紙とペンと印鑑と封筒とのりがあれば、すぐに完成させることができます。
デメリットは紛失や破棄などといった保管上の危険や、誤った書き方によって無効になる可能性があることです。
自筆証書遺言が無効とされる代表的なケースは三つあります。
一つ目は日付の無い遺言。問答無用で無効です。
日付は特定できなければならないので、年度の書き忘れや、○月吉日のような表記も無効とされます。ちなみに、遺言は何度でも作り直すことが可能。日付の新しいものが有効となり、古いものが無効となります。
二つ目は複数人で作った遺言です。
「私たち夫婦は――」で始まる遺言をイメージしてください。遺言はいつでも撤回や変更が可能ですが、共同遺言は一方の気持ちだけでは変更できないため、共同遺言そのものが無効とされています。
三つ目はビデオレター遺言や音声遺言です。
現行法では遺言は必ず書面に残す必要があります。ビデオレターやボイスレコーダーに思いを残しても、無効なので注意しましょう。ただし、書面の遺言書を作成した上で、家族への思いをビデオレターで残しておくことは、相続争いを防ぐ意味で非常に良い方法だといえます。
完成した自筆証書遺言は封筒に入れて、実印で封をしましょう。封筒に入れないと無効になるわけではありませんが、変造や破棄を防ぐためにも、封筒に入れてしっかりと保管しましょう。
自筆証書遺言は簡単に作れるため、トラブルも少なくありません。