赤ちゃん写真はイメージです Photo:PIXTA

2023年夏の甲子園で107年ぶりに優勝した慶應義塾高校(塾高)野球部。彼らの勝負強さはピンチのときでも自分の精神状態を常にプラス思考にしたり、日頃から勝利へのイメージトレーニングを欠かさないなどといった「メンタルの訓練」によるものだった。本稿は、吉岡眞司(著) 西田一見(監修)『慶應メンタル-「最高の自分」が成長し続ける脳内革命』(ワニブックス)の一部を抜粋・編集したものです。

プラス思考で無敵状態の
「赤ちゃん潜在意識」を目指せ

 常識の枠を壊そう。私はこれを塾高の生徒に、繰り返し伝えました。

 自分たちは日本一になれる、極論を言えばどんなことでもできる、そう思える精神状態が理想だからです。

 私が言ったことは突拍子もない理想論であり、かなり無理があると思った方もいるでしょう。でも、実はあなたにもそんな最高にプラス思考で無敵状態の頃があったのです。

 答えは赤ちゃんの頃です。

 赤ちゃんの脳の中に「自分はこれができない」という情報が入っていません。たとえば床にネジが落ちていたら、そのまま口に入れて食べようとします。

 それは「これは食べられない」とは考えてもいないからです。しかし、それを口にして痛い思いをして「ネジは食べられない」ということを知り、経験を積んでいきます。

 私たちは成長するにつれて、なんでもかんでもできると思っていたら命を守れないと気づき、生きていくために、生き残るために、自分の万能感を失っていくのです。

 幼い頃、自分は何にでもなれると思っていたのに、気がついたら、できないことばかりが頭に浮かんでしまう。

 プラス思考は年齢とともにどんどん失われていくといっていいでしょう。

 幼稚園の頃、もしも、誰か大人が幼稚園児に向かって、「かけ算ができないから、あなたは小学校に行けないよ」といっているのを見たら、あなたはどんな気分になるでしょうか。

「なんてバカなことをいっているんだ。幼稚園でかけ算を習っていないだけじゃないか。かけ算なんて小学校で習えば、自然にできるようになる。なぜ、その子の可能性をつぶすようなことを平気で言うのか」と思いますよね。

 しかし、大人はだんだん自分たちの価値観や基準で子どもを型にはめようとしてしまうのです。

 小学校低学年で計算が苦手な子がいたら、算数以外に期待を寄せます。

 小学校低学年で走るのが遅い子がいたら、運動以外の勉強を一生懸命がんばらせようとします。

 こうして、だんだん能力を周囲が規定し始めるのです。

 高校3年春の模試で、入りたいと思っていた大学で「E」判定が出てしまったとします。受験まであと1年もない。担任の先生や親からは「高望みもいいけど『C』判定が出ている大学もきっちりと視野に入れなさい」と言われます。