マナブ:ライブハウスにいるっていうのは絶対大事なことだと思ってるんですよ。……好きなやつがおるから行くっていうのがすごく自分の中で大きくて。「今日は○○(バンド名、以下同)おるわ」、「あ、○○と○○おるやん、じゃあ行こう」みたいな。ほかのバンドさんちょっと知らんけど、まあ機会があったらしゃべるやろうみたいな。この二つがおるんやったらおしゃべりしようぐらいの気持ちでライブハウスに行って。

 そしたらもうお酒も飲みたくなるし、「打ち上げも出ていいっすか」ってなって、打ち上げ出させてもらったら、一緒に出てたバンドさんと仲良くなったり。そしたら向こうが知ってくださったり。「○○実は知ってたんですよ」って。「あ、そうなんですね、ありがとうございます」って。「僕もお名前は」って挨拶してたら、「今度絶対また一緒にやりたいです」っていってくださって。で、関わりができたりとか。だからライブハウスにおるってすげー大事なことなんやなって。だから僕は空いとる日はなるべくライブハウスに行こうかなって。

共同体に埋め込まれることが
夢の実現を遠のかせる?

 ここまで、ライブハウス共同体が果たす積極的な役割をみてきた。しかし同時に、一部のバンドマンから語られたのは、ライブハウス共同体に埋め込まれすぎることの問題である。かれらは、バンド仲間をそれほど重要視してはおらず、特定のライブハウス共同体に準拠することも避けようとする。

 その理由は、特定のライブハウス共同体に埋め込まれると、逆に夢の実現から遠のいてしまうと考えられているからである。筆者のインタビュー時点で音楽事務所に所属していたリオは、これまでの活動を振り返って次のように述べた。

リオ:最初○○(ライブハウスA、以下同)で闘ってたんだけど、ここにいたら、ただの楽しいサークルの状態で終わっちゃうと思って、ちょっと一個上のライブハウスに出る、□□(ライブハウスB)、△△(ライブハウスC)とかそういう。だから○○いったん卒業するねっていうかたちで離れて。まあそっからは、ほとんど○○に戻るってことはなかったな。