前回までは上司や先輩から新人への伝え方について取り上げてきましたが、新入社員にとっても上司や先輩への「伝え方」を知っておくことは大切です。
「新人だし、仕事のことも会社のこともまだ何もわからないから当然だ」という姿勢で、思ったまま質問したりアドバイスを求めたりしていると、いくら上司でも「そろそろ覚えてくれよ…」と思うもの。場合によっては「この新人、使えない」と認定されてしまうかもしれません。
そこで、シリーズ世界累計259万部突破のベストセラー『伝え方が9割』の著者、佐々木圭一さんに、新人にぜひお勧めしたい「伝え方」を教えてもらいました。
(構成/伊藤理子)

即アウト!「ダメ新人」に一発で認定される「伝え方」ワースト5Photo: Adobe Stock

■Case1「経費精算システムの使い方を教えてください」

会社では、出退勤管理や経費精算などあらゆるものがシステム化されていて、わからないことだらけ。初めは当然、上司や先輩に教えてもらう必要がありますが、忙しいときに質問されると仕事の手を止めなければならず、「めんどくさいな…」と思われてしまう可能性もあると思います。
わからないことを質問するのは当然だし、新人には特に必要なことではあるのですが、「教えてもらうのは当たり前」のように言われると、内心うんざりされてしまうかもしれません。

このような場合は、ぜひ次のように伝えてみてください。

◎「鈴木さん、いつもありがとうございます。経費精算システムの操作方法を教えていただけませんか?」

これは、伝え方の技術「感謝」を使った伝え方です。人は「ありがとう」と感謝されると、相手との距離が縮まったと感じ、その後のお願いを受け入れやすくなります。この場合も、はじめに感謝の気持ちを伝えることで、教えようと思ってもらえるだけでなく、「ちゃんとわかりやすく、丁寧に教えてあげよう」と前向きに取り組んでもらえるようになります。

「ありがとう」から伝え始めると、どんなお願い事であっても相手がノーと言いにくくなります。とてもシンプルな方法ですが効果が高いので、ぜひ覚えておいてください。

■Case2「もう一度説明してもらえませんか?」

一度教えてもらったことだけれど、理解し切れなかったのでもう1回だけ説明してほしい…新入社員のみならず、こんな場面はあると思います。聞いたはずだけどうっかり忘れてしまったのでまた教えてほしい、というケースもあることでしょう。

とはいえ、ストレートに「もう一度説明してもらえませんか?」と伝えてしまうと、相手をイラっとさせてしまうかもしれません。口には出さなくても、「1回の説明で覚えておけよ!」「メモをちゃんと取っておけよ!」などと思う人が多いと思います。

こんなとき、ぜひこのように伝えてみてください。

◎「誰より丁寧に教えてくださるので、田中さんばかり頼ってしまってすみません。ミスをしないように、もう一度だけ説明していただけませんか?」

「誰より丁寧に教えてくださる」というのは、伝え方の技術「認められたい欲」を使った伝え方です。人は認められると、相手の期待に応えたくなるものです。このように言ってくれるならば、また説明してあげようかなと思ってもらいやすくなります。

そして、「ミスをしないように」は、伝え方の技術「嫌いなこと回避」を使っています。部下がミスをするというのは、上司や先輩にとって回避したいこと。ミスをしたときのリカバーは、「もう一度説明する」よりも何倍もの労力がかかります。ミスをなくせるのであれば、より丁寧に説明しようと思ってもらうことができます。

ポイントは、相手の気持ちに立って、相手が「そうしたほうがいいな」と思える伝え方をすること。ストレートに要望を伝えてしまうと、「こちらの気持ちや置かれた状況も考えられないのか」と一発でデキないやつ認定されてしまうかもしれませんが、伝え方の技術を使って相手が納得できるような伝え方をすれば、快く要望を聞いてもらえるようになるのです。