日銀は円安下でも緩和継続
円安抑制の配慮なし
日本銀行は4月26日の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決めた。市場ではドル円が年初の141円台から155円台へ10%超上昇する中で、円安対策として何らかの対策(国債買い入れ減額による長期金利上昇容認や追加利上げ)を取るとの見方が一部にあったが、この見方は裏切られる結果となった。
日銀は金融政策の現状維持を決めたと同時に、経済・物価情勢の展望レポート(展望レポート)を公表した。同レポートでは、物価見通しが上方修正されたものの事前の観測報道通り修正幅は小幅なものにとどまった。新たに示された26年度のコアCPI見通しは、前年度比+1.9%と物価目標である2%に到達しない見通しとなり、追加利上げが加速されるとの期待を高めるものではなかった。
さらに、会合後に開催された植田和男・日銀総裁の記者会見においても、同総裁は円安牽制姿勢を特段示さず、むしろ円安の基調的物価見通しへの影響は無視できると述べた。こうした流れを受けてドル円は4月29日にかけて160.17円へ急上昇した。
円相場にかかわらず今後、
日銀は緩やかな追加利上げへ
日本では日銀の目的を国内物価の安定としており、財務省が為替政策は所管している。このため今回の日銀の対応は、この枠組みの範囲内ではある。
もっとも、通貨の対外価値も考慮して金融政策を運営しているスイス中銀などとは異なり、「為替相場に直接的に影響を及ぼすために金融政策を用いない」と明確化したことは、日本の政策当局が円安を軽視しているとの姿勢に映り円売りに拍車をかけたと考えられる。日本にて金融政策と為替政策の役割分担が修正されない限り、日銀は円安抑制のために金融を引き締めることはないだろう。
とは言え筆者は、円相場動向にかかわらず、日銀が7月に追加利上げを決定し、その後も半年に1回程度のペースで0.1%ポイントずつの緩やかな利上げを続けると想定している。展望レポートにおける日銀の物価見通しは、各政策委員が「先行きの政策運営について市場の織り込みを参考」に作成しており、同程度の利上げは日銀として想定済みと見ていいだろう。国債買い入れ額についても、日本の長期金利の急上昇リスクが低下したタイミングで、年内にゆっくりと減額していくと想定している。