日本の中小企業が
忍者と同じ轍を踏まないために

 忍者の需要は合戦が減れば自然と減少する。そして、人数がダブつけば人件費の減少が起きる。安く請け負うことで、おそらく質的な低下も招いた可能性がある。

 私の亡父は、今は上場廃止となった弱電メーカーに勤めていた。現役の頃にふと口にした、「『落穂拾い』ばかりでは、儲けが出ない」という、愚痴だったのか苦悩だったのか、そんな言葉がなぜか頭に残っている。

 創業者は個人で特許や実用新案を多数持っていて、戦後、卓越した技術と創造性豊かで高品質な製品、ユニークな発想と行動力で企業を上場させた。だが、創業者の死から企業体質が変わり、OEMで大企業に納品する比率が売り上げの多くを占めていった。いわば、巨大な協力会社(下請)になっていったのである。

 そこで、利益が薄くても売り上げを立てるために「落穂拾い」のような、利幅のない仕事まで受けていた。「良いモノやサービスを提供し、実績を積み上げているのに楽にならない」という構造である。

 筆者は不況下にも懸命に努力する協力会社、下請企業に否定的な感情はまったく持っていない。むしろ、そうした企業が一社でも多く生き残ることが、日本の強みになると感じずにはいられない。だからこそ、忍者と同じ轍を踏んでほしくないのである。