逆にリーダーに強い思いが感じられないとき、稲盛さんは烈火のごとく怒りました。

 目標が未達に終わるのは達成への強い思いが足りない証拠です。人間というのは困難な状況に置かれた際、普段は想像できない力を発揮したり、何とか打破しようと知恵を生んだりするのですが、絶対に負けない、あきらめない心がなければこれらの力や知恵は生まれません。稲盛さんはそれをわかっていたので私たちを叱責したわけです。

 また、リーダーが封印すべきものは「他責思考」です。

 人間の思考には自責と他責があり、ビジネスの世界での他責思考とは、

 ●仕事で何か問題が起こったとき、その責任は他者や環境にあるとする考え方です。

 これに対するのが「自責思考」で、

 ●仕事で何か問題が起こったとき、その責任は自分にあるとする考え方です。

 他責思考でいたら問題はいっこうに解決しません。他者の責任とし、自身では問題に向き合わず、解決に向けた行動を起こさないからです。問題解決がなければ目標達成とはならないでしょう。

 リーダーに必要なのは自責思考に他なりません。何事も自分の責任とすることで問題を解決し、目標達成につながるのです。

 稲盛さんは他責思考を排除し、自責思考で仕事に臨むことを常に語り、私も徹底的に叩き込まれました。

 自責思考は責任をすべて自分で背負うため、「プレッシャーに押しつぶされてしまうのでは……」と感じる人もいるかもしれません。

 そこで大切なのがマインドです。

 問題解決や目標達成に対してマイナスのイメージを持っていると悪影響が出ますが、会社の成長や社員の幸せのためというプラスのイメージへ変えるのです。具体的には「自分事として解決していく」、「他人と過去は変えられない」といったイメージを描ければプレッシャーは消え、むしろモチベーションとなって頑張ることができるのです。

組織力を低下させた人員配置の失敗
つぶれる寸前まで社員を追い込んだ過去

 目標達成はリーダーの手腕にかかっています。中でも問われるのがマネジメントです。チームのメンバーに持っている力を十分に発揮してもらうことは何より大切で、それには一人ひとりのスキルや特性を見極め、リーダーがリーダーシップをもって関わっていかなければなりません。