「マネジメント」とは「ヒト」「モノ」「カネ」の3つの経営資源を活かし、成果を出すことを指します。そして「リーダーシップ」とは、人をモチベート(動機づけ)しながら、目指すべき方向へ導いていくことを意味します。

 チームで目標達成を目指す過程でマネジメントが思いどおりにいかないこともしばしばでしょう。

 私自身、苦い経験がありました。

 私が在籍していたJALインフォテックのシステムは24時間365稼働しているため、安全に稼働しているかどうかを常時チェックし、不具合を見つけたら修復するなど維持管理を行うのが重要な業務のひとつになっています。この任務を担うMさんという男性がいて、キャリアを重ねていました。

 私はMさんを維持管理の業務から担当を変え、新規のプロジェクトに抜擢してリーダーを務めるよう依頼しました。新しい仕事やポジションは本人の新しい挑戦となり、ポテンシャルを引き出せると思ったからです。

 しかし、実際は逆でした。Mさんは新規プロジェクトに馴染めず、先頭に立ってメンバーを引っ張っていくことに苦痛を感じていました。日に日に本来の輝きを失っているのは明らかでした。

 それでも当時の私は「この苦しさを乗り越えなければいけない」「新しいことに挑戦しなければダメなんだ」としか頭になく、Mさんを叱咤激励していました。

 ところが限界が訪れます。このままではMさんがつぶれてしまうという状態まで追い込まれてしまったのです。

 私はMさんをシステムの維持保守の業務に戻しました。するとすぐに輝きを取り戻し、はつらつとして仕事に打ち込むようになりました。

 システムの維持保守は地味ながらもITサービスを機能させるうえでなくてはならず、地道な努力と技能を必要とします。

 Mさんは維持保守の業務に適しており、彼がいたからこそ安定稼働し、トラブルが起きても早期に修復できたといっても過言ではありません。

 注目すべきスキルや特性を結果的に無視して人員配置していたことをのちに深く反省しました。