「圧倒的に面白い」「共感と刺激の連続」「仕組み化がすごい」と話題の『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』の著者・森武司氏は、2005年の創業以来、18年連続増収増益を達成し、年商146億円となった。ここまで会社を成長させてきた秘密は何か? 本書からより深い学びを得ようと、インタビュー企画を実施。今回インタビューするのは、FIDIA役員の橋本雄一氏。
橋本氏はCRO(チーフ・リレーションシップ・オフィサー)というFIDIA独自の役職で、年間800人以上に会う“人脈づくりのプロ”として事業拡大に大きく貢献した。
今回は“一流の流儀”をテーマにし、橋本氏が出会ってきた著名人の「一流」を感じたエピソードについて話を聞いた。
「子どもたちを救いたい」一心でのプロジェクト
――著名人との接点が多い橋本さんですが、プライベートでのおつき合いもあるのでしょうか。エピソードがあれば教えてください。
橋本雄一(以下、橋本):プライベートでもおつき合いしている俳優さんがいるのですが、その方から持ちかけられた一つの話題から、ビジネスまでつながったエピソードをお話します。
とある食事の席で、その俳優の方がなにげなく僕に、「僕ね、子どもたちを救いたいんですよ」と言い出したんです。
それはどういうことなんだろうと思って話を聞いてみると、夏休み明けの始業式後に、自殺する子どもたちがいるそうなんです。
そんな事実がある自体知らなかったと思うと同時に、衝撃を受けました。
一体どういうことか。
実は小中学校で出される給食が関係していたんです。
普段、何気なく食べている給食は、お金がない家庭にとってはとてもありがたいけれど、それがなくなってしまうと、子どもたちが夏休みの間に、ガリガリに細くなってしまうそうです。
これを友達に見られたくないために、自殺してしまう子どもたちがいるという。
そういう子どもたちを、どうにか救えないかと、僕は意見を求められました。
僕はその想いを聞き、絶対に仕事にして社会に貢献したいと、その想いをいろいろな人に伝えました。
その中で大手商社の方に相談をしたところ、こども食堂と提携したり、さらにその商社が持っている生産工場で、生産・販売・配送まで一貫生産できると提案をいただいたんです。
「三方よし」の新しい物販モデルの形
――子どもを取り巻く「命」について考えさせられる問題に対し、それからどのようにプロジェクトは進んだのでしょうか。
橋本:僕は、Tシャツ販売で考えられないかと、提案しました。
一般的に新しいブランドを立ち上げるのはすごく難しい。まず、とんでもない金額の広告を打ち、店舗を構え、そこに膨大な在庫を抱える。万一売れなかったら、ものすごい赤字。これがアパレルの新ブランドを出す大きなリスクです。
でも、今回の企画は完全に受注生産、かつ広告の代わりに俳優である彼がX(旧ツイッター)で「僕がデザインしたTシャツの売上金を、子どもたちを助けるために寄付します」と、情報発信するだけでした。
――受注生産に限定し、それをダイレクトにお客さんに届ける。広告費や在庫、店舗さえもいらない。ほぼコストがかからない新しい仕組みができたわけですね。
橋本:なんでもかんでも「おすすめ」「自分がつくった」と、自分の信頼を削りながら商品を売るインフルエンサーも多くいます。
今回の物販がうまくいったのは、寄付をしていることもそうですが、彼のファンにその想いが届いているからこそ、信頼が下がるどころか上がった好事例かと。ありがたいことにTシャツは即完売でした。しっかりと利益が残り、よい物販モデルにもなったことで、この事例は「インフルエンサーマーケティング第2章」となっていくのかなと思います。
コストがかからない新しい形の販売の仕組みの完成と、寄付モデルにすることで、影響力が増大しながら、モデルとなる有名人のファンも増える。
誰も損をしない「三方よし」の仕組みが出来上がったわけですが、これはビジネスのスタートではなく、子どもたちへの想いがあったからこそ生まれた、彼の人柄を強く感じるプロジェクトでした。