圧倒的に面白い」「共感と刺激の連続」「仕組み化がすごい」と話題の『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』の著者・森武司氏は、2005年の創業以来、18年連続増収増益を達成し、年商146億円となった。ここまで会社を成長させてきた秘密は何か? 本書からより深い学びを得ようと、インタビュー企画を実施。そこでインタビューするのは、元芸人であり、FIDIAの不動産事業部を任されている水上雄一氏。
実は、あの人気芸人の元相方でもあった水上氏。今回は芸人になったきっかけと、今や人気を不動のものとするあの芸人の下積み時代の話を伺った。あの芸人が下積み時代から行っていた、売れるための行動とは?

【元相方が語る】有名芸人が下積み時代にやっていたことPhoto: Adobe Stock

思わぬ事態で芸人の道に

――水上さんはFIDIAに入る前は、芸人だったと聞きました。いつから芸人を目指していたんですか?

水上雄一(以下、水上):実は小さい頃から芸人になりたかったとか、ずっと芸人になるのが夢だったというわけではないです。
幼馴染が頭がよく、それもあって親から「大学に行け」と言われたんです。
僕は頭が悪かったので一浪しながら1日18時間勉強した結果、運よく第一志望の大学に受かったんです。

ただ、いざ受かったときに「あんたみたいなのが受かると思わへんかったから、お金貯めてへん」と親に言われて……(笑)。

当時は奨学金制度も知らなかったので、それだったら好きなことをしようと思いました。

――すごい状況から芸人の道に進むことになったと。お笑いに関しては、それまで、どんな位置づけだったんですか?

水上:マニアでもなく、詳しくはないけど好き、といった感じです。お笑い番組をたくさん見ていたわけでもなく、文化祭でお笑いをやるわけでもなく、ぼんやりと“好きだしお笑いやろうかな”程度に考えながらのスタートでしたね。

――なるほど。決断がすごくポジティブですね。そこから、吉本興業の養成所に入られ、その入学式で、あの人気芸人さんに出会ってコンビを組まれるんですね。

水上:はい。南海キャンディーズの山里君ですね。
数百人いる入学式で、「この子が一番面白い!」と直感で感じたので、僕から声をかけました。見た目はやや怪しかったのですが、直感でオーラみたいなのが見えたんですね。
交換日記のように互いにネタ帳を交換し、「面白かったら組もうや」って形で、コンビを組むことになりました。
NSC卒業公演の1週間前までコンビを組んでいました。

――山里さんの初代相方が、水上さんなんですね。Huluのドラマ『だが、情熱はある』でも、当時の相方をM君と表現されるシーンがありましたが、あれは水上さんなんですよね?

水上:そうですね(笑)。

あの人気芸人は
下積み時代から違っていた!

――水上さんは、山里さんの成功要因をどう考えていますか?

水上:まず在学中から、お笑いを仕事としてやっていこうという熱量や本気度が他の人と違いました。とにかくストイック。空き時間はすべて、自分が理想とするお笑いをつくるために全力を注いでいました。

当時のNSCには授業を欠席する人もいたのですが、山里君は、すべての授業に出てネタ見せをしていました。その後、ネタ合わせを2、3時間して帰るというのを在学中、ずっと続けていました。

また、僕は在学中、同期とよくつるんでいたのですが、山里君はそうではありませんでした。山里君的に、「ここには遊びにきているんじゃない」という気持ちがあったんだと思います。

当時、アルバイトなどもしていなかったと思います。関西大学とNSCに通いながら、それ以外の時間はずっとネタづくりとネタ合わせ、どうやったら売れるのかということだけに時間を使っていたんじゃないでしょうか。

――そういった下積みを経て、南海キャンディーズでブレイクするんですね。

水上:そうです。僕とのコンビ、他の人とのコンビを2回ほど、そしてピン芸人としても活動してから、南海キャンディーズだったと思います。

しずちゃんと組んだときに、当時男女のコンビがほとんどいませんでした。
すごく新鮮でしたし、ツッコミに回ってボケ的なツッコミ方をするのが、すごくちょうどよかったんです。

山里君は何かボケを考えてものを言うより、客観的に何かにたとえて言っているときが一番面白い。

しずちゃんのキャラクターがあってこそそういう状態になるわけですから、もうバッチリ当てはまっていますよね。

山里君がツッコミをするのは、南海キャンディーズが初めてだったと思いますが、実は裏話があります。NSCの授業で、ある先生がずっと山里君に「君はツッコミが向いているよ」と言ってたんです。

それを、見抜いていた先生もスゴイですよね。

――森社長と山里さんとの共通点はありますか?

水上:『スタートアップ芸人』の中にあるように、2000年の吉本若手の大会決勝戦で野性爆弾と戦った森さんは、30対0の完敗をきっかけに芸人を引退しています。

しばらく引きこもり生活をしていた森さんの運命を変えたのは、本にも何度も登場するキーワード「仲間」からの手紙だったんですよね。そこから奮起した森さんは、社会人として再スタートし、多くの仲間と共に起業、そして今のFIDIAにたどり着いたわけです。

山里君が芸人として「自分が売れるためには」と考えていたのと同じく、「“いつか”やろうではなく“”やろう」と、常日頃から前を向いてナンバーワンを意識していた部分では、二人の共通点としては挙げられるかもしれません。

『スタートアップ芸人』は経営のノウハウはもちろん、マインドの部分も多く取り上げられているので、長年コンプレックスに悩み続けている方や、人生の大逆転を望む方にとっても良い参考書になると思います。