好奇心はスパイラル

坪田:我々はどちらかというと、勉強が得意だと認識している人たちだと思うんですよ。例えば、江戸城跡の公園に行くと、江戸城の概要が書いてある案内板があるでしょ? ああいうのって、絶対に読んじゃいません?

尾原:そうですね(笑)。僕は読むタイプです。

坪田:そうなんですよ。これは、勉強が得意な人あるあるなんです。あれを読んじゃうのって、江戸城のことがだいたいわかっているからなんですよ。

伊藤:わかっているんですよね。江戸城といえば、「江戸城無血開城」という言葉がすでに頭の中にあるから、「無血開城の江戸城はどうだったっけ?」と。これは、階段の一歩目を踏んでいますものね。

坪田:そのとおりです。「太田道灌」と書かれていても、「なんとなく聞いたことあるし」って、ちょいちょい知っているから読むんですよ。

 ちなみに、うちの奥さんは100パーセント読みません(笑)。勉強があまり好きじゃないからです。だから観光地に行っても、そういうのは一切読まないんです。

 でも僕は、ついつい立ち止まって読んじゃうんですよね。それは、ちょっと知っていることがあるからです。だから、「もっと細かく知りたい」という好奇心が芽生えるんですよね。

伊藤:そうすると、好奇心ってスパイラルですね。

坪田:そのとおりなんです。

伊藤:学んだら、またちょっと知っていることが増えるから、どんどん学ぶ。人が行動する時の原理に似ていると思うんです。「モチベーションがあるから行動するんじゃなくて、行動するからモチベーションが湧く」とよく言いますよね。それと、まったく同じですよね。

坪田:まさにそうです。

尾原:その一歩目が、「ちょっと知ってる」ということですか?

坪田:そうです。今、伊藤さんがおっしゃったのは「作業興奮」です。作業しているうちに興奮して、テンションが上がって、やる気になる話だと思うんですけど、それとまったく同じです。AIは、そのきっかけをくれるんですよね。

尾原:そうですね。ChatGPTの裏側にあるトランスフォーマーモデルは、「とりあえず、話がつながるように次の文章を当てていきましょう」としているだけです。

 まさに、坪田さんという質問者と大きな質問の間をつなごうとするから、どこかで「ちょっと知ってる」を作ってくれるんですよね。

坪田:そうです。しかも、その人に合わせていってくれるので、使えば使うほど、最高の教師になるんじゃないかな。教師というより、「学習のサポーター」ですよね。

尾原:なるほどね。

「勉強が得意な子」はなぜ観光地の看板を読みたがる?「好奇心」を育てるたった1つのコツ
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