好奇心は「ちょっと知ってること」に対して生まれる

伊藤:よく考えてみると、前段階で好奇心を持つとか、「人間は可能性がある」「私はこれが好き」という感覚がないと、そもそも階段を上れないんじゃないかという気がしてならないんです。

 世の中には二種類の人間がいると思います。それは、階段に向かう人間と向かわない人間です。だから、好奇心のようなものは育てないといけないなと。そこに至る感覚を、坪田さんに聞きたいんです。

尾原:確かに。いろんな生徒さんがいるわけじゃないですか。

坪田:今、お二人のお話を聞いてそれぞれ思ったのが、1つはデカルトが言う「困難の細分化」です。でも、物事を細分化するのって人間には難しいから、例えば「breakという単語が難しくてなかなか覚えられないから、5パターンくらいに細分化してくれる?」とChatGPTにお願いします。そうすると、細分化してくれるわけですよ。

 もう1つは、「好奇心」がキーワードになっていたので心理学的に説明すると、好奇心は、「ちょっと知ってること」に対して生まれるんですよ。

尾原: へえー。

坪田:「知らないことに対して『知りたい』と思うのが好奇心なんじゃないの?」って思うかもしれないですけど、そうじゃないんです。

 例えばアラビア語が書かれていたとして、アラビア語をもっと知りたくなるかというと、たぶんならないじゃないですか。

尾原:まったく読めないですからね。「なんだこのグニャグニャは?」って、なっちゃいますね。

坪田:そうなんですよ(笑)。だから人間は、まったくわかっていないことに対して好奇心を持ちようがないんです。

尾原:なるほどね。

坪田:例えば何かの知識を得る時に、日本語話者だったら、日本語で書いてあることが前提条件ですよね。

「人間には好奇心があるんだから、好奇心を発揮してタイ語でインターネットについて学びなさい」と言われても、嫌じゃないですか。

尾原:確かに。僕の友人は、とにかくいろんな国の女の子としゃべるのが好きだから、7カ国語で「君はバラのように美しい」って言葉だけを知っているんですよね(笑)。

(一同笑)

坪田:おもしろい。

尾原:それを知っていると会話の始まりになるから、会話の往復が始まって、そのあと7カ国語しゃべれるようになったんですよ(笑)。

坪田:でも、本当にそうですよね。