実は子どものやる気を削いでいた!親が無意識に連発しているNG褒め言葉写真はイメージです Photo:PIXTA

すっかり定着した「ほめる子育て」ですが、実は思わぬ落とし穴があります。25年間で延べ5000名以上のバイリンガルを育成した経験から解説します。(TLC for Kids代表 船津 徹)

※この記事は『「強み」を生み出す育て方』(船津徹・ダイヤモンド社)から一部を抜粋・再編集したものです。

ほめて育てると本当に「やる気」が上がるのか?

 子どものやる気を高めるノウハウとしてアメリカから輸入され、日本でも定着したのが「ほめる子育て」です。「知能が高くなる」「自己肯定感が高くなる」など、ほめる効果を裏付ける学術研究が次々と発表され、家庭や学校に浸透していきました。

 では、ほめられて育った子どもたちはどうなったのでしょうか? 気になりますね。

 アメリカで「ほめる子育て」で育った最初の世代は、1980年代初めから1990年代後半までに生まれた「ミレニアル世代」です。

 2013年に『タイム』誌は「The Me Me Me Generation/私、私、私世代」というタイトルでミレニアル世代の特集記事を組みました。その中で、ミレニアル世代を「自己顕示欲が強く、ポジティブな楽観主義者である半面、怠け者で、権利の主張ばかりするナルシストで、親に依存している」と手厳しく評価しています。

 たっぷりほめられて育ったミレニアル世代は、やる気に満ちあふれ、輝かしい人生を突き進んでいるかと思いきや、仕事を転々とし、親への経済的依存度が高く「自立できない傾向が強い」ことがさまざまなデータでわかってきています。

 どうして、こんなことになってしまったのか?

 もちろん「ほめることは良いこと」です。しかし、ほめ方にはコツがあります。子どもを手放しにほめてしまうと、おかしなことになってくるのです。

 自分がどれだけがんばったのかは、本来、子ども自身が一番よくわかっています。子どもの自己肯定感を高めようと、大して努力もしていないのに、「すごいね!」「才能あるね!」と子どもをほめてばかりいると、「がんばらなくても僕はすごいんだ! 特別なんだ!」と勘違いさせてしまい、自発的なやる気をそいでしまう危険性があるのです。

 子どもが勘違いするリスクを減らしやる気を上げるには、なんとなくほめるのではなく、「良い面を具体的にほめる」ことが効果的です。「パズルを解くのが本当に早いね」「絵の色使いがユニークで素敵だね」と、子どもが持つ強みの芽を「具体的に」ほめましょう。子どもは良い面をより強く意識するようになり、実際にその部分が伸びていきます。すると、「自分はできる」という根拠に裏付けられた自信が大きくなり、「やる気」が高まるのです。

子育て成功のカギは「強み育て」にある

実は子どものやる気を削いでいた!親が無意識に連発しているNG褒め言葉「強み」を生み出す育て方』 (ダイヤモンド社)定価:1980円(税込)

 子どもが社会の変化に翻弄されずに、自分らしく幸せに生きていくには、失敗や挫折に負けない「たくましさ」を確立しなければなりません。一生ものの武器になるたくましさですが、どのように育てれば良いのでしょうか?

 たくましさが育つ要因は、家柄、血筋、遺伝ではありません。もちろん親の学歴や職業も無関係です。「子どもの潜在的な強みを引き出すこと」でたくましさは育つと断言できます。

 つまり、子育てで最優先すべきは「強み育て」なのです。強みは、音楽でもスポーツでも勉強でも、なんでもいいのです。