なぜ仕事ができない「給料ドロボー」が生み出されてしまうのか??
そう語るのは、これまで4300社以上の導入実績がある組織コンサルタントである株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大氏だ。「会社員人生が変わった」「もう誰も言ってくれないことがここに書いてある」と話題の著書『リーダーの仮面』では、メンバーの模範として働きつつ、部下の育成や業務管理などで悩むリーダーたちに「判断軸」を授けている。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、注目のマネジメントスキルを解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)
「給料」とは何かを考えるとき
あらためて、今もらっている「給料」とは何かを考えてみましょう。
給料とは、「有益性」への対価です。
給料は、結果を出した、利益をもたらした、価値を生み出した「有益性」に対して支払われるもの。
この仕組みはこれまでも、そしてこれからも変わりません。
景気がいい局面では、この仕組みがボヤけていました。
それでもなんとなく回っていたのです。
本来は「有益性」に対して支払われるべき「給料」が、有益性をそれほど生んでいない人に対しても支払われていました。
生み出した有益性以上に給料をもらっていた人たちというのは、いわば「借金」をしていたのと同じです。
いわゆる「給料ドロボー」と言われる人たちです。彼ら、彼女らにとっては、それが個人の戦略なのです。
組織のことはまったく考えていない。自分さえトクすればいいと思っている。
つまり、会社に対して借りをつくっていたわけです。
もし、景気がずっとよければ、そのまま逃げ切れる人も中にはいたかもしれません。
しかし、これからの時代では、誰が借金をしていたかは、如実に表れます。
常日頃から「借金」をせずに、むしろ「貯金」をしながら働いていた人もいます。
それが、「組織の利益」に貢献し続けた人です。
そのような働き方ができていた人は、危機的な状況になっても慌てないでしょう。むしろ必要とされているはずです。
経営者が社員に「借金」させるのか、「貯金」させるのか。
それによって、社員の人生はまったく変わってくるのです。
「経営者のストレス」と「社員のストレス」
経営者は、社会からのストレスを受けています。
ストレスがあるからこそ、生き残ろうとします。
その「いいストレス」をきちんと社員にも与えてあげないといけません。
経営者がストレスをすべて吸収して、1人1人に「配慮」してしまうことは、社員の生きる力を奪うことになるからです。
かつて私は、経営者である自分が全部ストレスを吸収して、社員にはできるだけストレスを与えないほうがいいと思っていました。
しかし、いいストレスを奪うことは、実はまったく社員のことを大切にしているとは言えないと気づいたのです。
社員に対する思いは、何ひとつ変わっていません。
自分の会社に入ってくれた社員は大切だし、社員を愛する気持ちはまったく変わっていない。
ただ、大切にする正しい方法がやっとわかった。
それこそが、「社員にきちんといいストレスを与えてあげる」ということだったのです。
「従業員満足度」を気にする経営者がいます。
「楽しく働いてもらう」ことに力を入れる経営者もいます。
しかし、これらは社員の「今この瞬間」の利益にしかフォーカスしていません。
そうではなく、今を含めた未来にしっかり利益を与えること。それが求められているのです。
本質にもとづいた、本質的な利益を与える。
しかも、今だけでなく未来への利益を与える。
それが今後ますます大切になってくるのです。
(本稿は、『リーダーの仮面』より一部を抜粋・編集したものです)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモ、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)を経て、ジェイコム株式会社にて取締役営業副本部長を歴任。2013年、「識学」という考え方に出会い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2024年6月現在、約4300社の導入実績がある。主な著書に『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』のシリーズ(いずれもダイヤモンド社)がある。