太陽の光を浴びることが
「うつ」の予防に有用

 うつ病になったら脳内のセロトニンを増やす治療を行うことから、うつ病になる前からセロトニンを増やしておくのは、うつ病の有用な予防といえるはずです。セロトニンの材料はトリプトファンという「必須アミノ酸」ですが、肉や魚、大豆製品、乳製品、バナナなどに多く含まれています。これらの食品を多めに摂ることで、ある程度うつ病の予防ができると考えられています。

 コレステロール値が上がることを心配し、肉類を敬遠する人がいますが、それが逆にうつ状態を悪化させると考えられます。実はコレステロール値が高い人のほうが、うつになりにくいことも明らかにされているのです。コレステロールにはセロトニンを脳に運ぶ役割があるとされていて、高齢になれば動脈硬化の予防より心の健康を優先させたほうがいいという考えから、私は肉を食べることをすすめています。

 もう一つ重要なのは、太陽の光を浴びることです。

 欧米では日照時間が少ない冬場(太陽が顔を見せない地域さえある)にうつ病が増えるといわれますし、高照度の光を当てる光療法という治療もあります。それほど人間の体にとって太陽の光は重要なものなのです。

 太陽の光を浴びるとセロトニンの分泌が促されることは、もはや定説になっています。さらにいうと、セロトニンは睡眠ホルモンのメラトニンの材料になるものですので、日光を浴びると眠りの質もよくなるとされています。

 もうひとつ、セロトニンを増やすとされているのが、リズミカルな運動です。体を一定のリズムに合わせて動かすことに意味があり、動かす場所は咬筋と呼ばれる口の横の筋肉や、横隔膜など呼吸をする際に動かす呼吸筋など、どこでも大丈夫。リズミカルな呼吸や咀嚼がセロトニンを増やすのです。

 本当にうつ病になってしまったら、このレベルのセロトニン増加法では不十分で、薬を飲んだほうがいいわけですが、予防の面でいえば、日常生活でセロトニンを増やすよう心がけることは、メンタルヘルスによい影響を与えるはずです。