21世紀に入り非接触型ICカードや情報通信端末が普及し、アンテナ部(読み取り機器)にかざすだけで改札を通過できるものの、まだまだアンテナ部にかざすのは「右側」である自動改札機が主流です。

 日本の有料道路では、ETC普及前から左ハンドル専用のチケット発券機や料金精算機設置レーンを見かけます。そんなクルマの左ハンドルには配慮するいっぽうで、人間の左利きに対しては――

《右利き用が基本なので、そのなかに1台あるいは2台だけ左利き用を設置すると、かえってお客さまが混乱するおそれがあります。左利きのお客さまへの配慮は、キップの挿入口を5度だけ左側に傾けることで対処しております》

 このコメント、1999年に阪急電鉄の関係者が明らかにしたものですが、21世紀においても、配慮そのものは大きく変わりません。

13歳の女子中学生が訴え
望まれる「左利きへの配慮」の広がり

 また当時、報道番組の左利き特集で行なわれた阪急電鉄梅田駅改札口での調査によると、左手で自動改札機に切符や定期券を挿入した乗客は1000人中なんと106人。駅での左利き率は10.6パーセントでした。

 利き手の矯正を経験せずに育つ左利きが増えるいっぽうで、「鬼門」ともいえる自動改札機への不満が絶えることはありません。2020年12月26日付け中日新聞には――

《電車の改札を通る際、改めて違和感を覚えました。切符を入れたりICカードをタッチする場所はたいてい進行方向の右側にあったからです。右利きなら問題ないのでしょうか、私は左利きなのです》

 と左利きの不便を訴える女子中学生(13歳)の声があります。利き手の左右を問わないシームレスでストレスフリーな自動改札機の普及に期待するいっぽうで、人間そのものが情報化するIT技術の発展は功罪相半ばするものがあります。

 人と人の非接触化が進めば、ますます他者の身体性への共感力が薄れていくことでしょう。左利きの不便さが可視化される既存の自動改札機の段階で「左利きへの配慮」が進むことが望まれます。