でも全てを足し合わせると、比較になる選手なんていない。議論の余地すらない。野球選手としての完成度を見たら、同じ次元の選手はいないと思う。歴史を遡ってもいないかもしれないし、これからも出てこないかもしれない。そういう意味で、僕は史上最高の選手だと思う。

トモヤ これもみんな同じ意見だと思うけど、大谷は二刀流選手としてベーブ・ルースを超えたと思う?

サム うん。大谷の体のケアに対する意識はすごいものがある。体つきを見てれば分かるよね。

 ベーブ・ルースの社会的な影響力がすごかったことは理解している。野球が今の地位にあるのも、ベーブ・ルースがいたから。それでも、大谷と比べるのは、ペレをメッシと比べるようなもの。ペレの時代のワールドカップの試合を見たら、中盤で歩いてボールを運んでいるんだよ。昔の選手が今の選手より優れているなんて、とても言えないくらいスポーツは進化しているんだ。

40歳までプレーできても
「二刀流」はあと5年だろう

トモヤ 大谷はあとどれくらい二刀流を続けられると思う?5年後、10年後はどうなっているかな?

書影『米番記者が見た大谷翔平 メジャー史上最高選手の実像』(朝日新聞出版)『米番記者が見た大谷翔平 メジャー史上最高選手の実像』(朝日新聞出版)
サム・ブラム 著、ディラン・ヘルナンデス 著、志村朋哉 聞き手・訳

ディラン 一般的に、修復した靭帯の寿命は5年くらいと言われている。来年は登板しなかったとして、あと4、5年は持つことになる。その時点では、クローザーになるかもしれないね。僕は彼が40歳までプレーすると思うし、もっと言えば、状態の良い40歳になると思う。彼の体型や体調管理の徹底ぶり、アスリートとしてのタイプからして、多くの人が思っている以上に長くプレーできると思う。二刀流となると、肘の状態次第になるから、たぶん靭帯の寿命の5年くらいじゃないかな。40歳で50本塁打を打つとは言わないけど、30代後半になっても非常に効果的な選手でいると思う。

サム 長く二刀流でプレーすることについては、少し懐疑的かな。大谷のベストシーズンはすでに3度見たと思う。今は2度目の靭帯修復から戻ってきたばかりで、受けた手術の内容も分からない。復帰して投げる時には31歳になっているし。

 長くやり続けるためには、歳を重ねるにつれて、変化も大きくしていく必要が出てくる。大谷が40歳までプレーするには、パワーを維持してホームランを打ち続ける必要がある。簡単ではないと思う。