資産形成としての
不動産購入

 中国人が賃貸を忌避するもう一つの理由は、資産形成ができないということである。仮に10年間、賃貸で家を借りた場合、せっせと毎月家賃を払っても、退去時には手元になんの財産も残らない。中国人は日本人に比べて財産形成に関心が高く、さらにマイホームはステータスシンボルであるため、なんとか家を購入しようとする。ただし、ビジネスを行う人、とりわけ、店を経営する人たちは例外である。彼らはたいてい不動産を買わずに、賃貸で店舗を借りる。ビジネスは失敗のリスクもあり、家賃は店の経費として計上できるからであろう。

 総じていえば、中国人は自分が住む家としてマイホームを買う志向が強い。人口の多い国であるため、みんながいっせいにマイホームを購入しようとして、不動産ブームが一気に巻き起こった。実需と潜在需要を考えて、投資家も中国の不動産市況を楽観的に見通すようになった。一方で、経済発展とともに、所得格差は急速に拡大した。富裕層はマイホームを所有するだけではなく、投資目的で2戸目、3戸目の物件を買っていった。不動産ブームが過熱しすぎたため、中国政府は銀行に通達を出して、2戸目以上の物件を購入する個人に対して、頭金を引き上げたり、住宅ローンの金利優遇を引き下げたり、さまざまな措置を講じるよう命じた。

 ただ、もっとも重要な固定資産税はいまだに導入していない。富裕層は投資目的で2戸目や3戸目の物件を購入するが、ほとんどの人はその物件を賃貸に出すことはない。物件の値上がりを待って転売し、キャピタルゲインを狙うのだ。一般的にマイホームの購入は実需であり、不動産バブルにはなりにくい。投資と投機が盛んになることで、バブルは大きく膨らむようになるのだ。

 日本も中国も貯蓄率の高い国であるが、両者には異なる面がある。日本人はお金をためても、無理にリターンを求めず、多くの人は金利がゼロでもせっせと銀行に預金する。それに対して、中国人はリターンを求める傾向が強い。個人の金融資産は直接的ないし間接的に不動産市場に流れていき、不動産バブルを拡大させたといえる。