「まるで淑女とステップを踏んでいるよう…」クルマ好きの若手作曲家を陶酔させた、最新フェアレディZの乗り心地【試乗記】日産横浜本社前にて。やはりフェアレディZが走ると、雨にもかかわらず足を止め、「ひと目Zを見よう」という人、 撮影する人もいた。数あるスポーツカーの中でも、これだけのオーラを放つ車はZをおいて他にないのかもしれない

東京在住のZ世代以外は
「若者のクルマ離れ」を感じていない

 車、音楽、そして活字――。戦後間もない時代から、日本が高度経済成長をひた走り、バブルの光と陰を見た1990年代まで、若者たちが好んだと言われるものがこの3つだろう。

 だが令和の時代、これら3つは、今や時折ニュースなどで目にする「若者の○○離れ」として取りあげられる筆頭格といった趣きすらある。

 この「○○離れ」のうち、とりわけ車は誰言うとなくその代表として捉えられがちだ。

 確かに、関東なら東京を中心とする首都圏、関西なら京阪神地区といった都市部でマイカーを持つとなると、その維持費が嵩むかもしれない。また、環境への配慮が叫ばれる時代である。人々の間では、ガソリン車への根拠のない漠然とした拒否反応のようなものがある。これらが若者のみならず、人々の「車離れ」を引き起こしているのかもしれない。

 しかし、どんなに時代が移ろうとも、人間の本質にさほど違いはないはずだ。運転席に座り、ハンドルを握り、家族、友人や恋人とドライブを楽しむ。安全性は当然のこととして、人智を超えた機械、すなわち車ならではのスピードに興奮することは、時代を問わず若者の心を捉えるのではなかろうか。ひいては若者のみならず、ミドル、シニア層の心にも刺さるのではなかろうか。

 こんな調査結果がある。自動車リース業の株式会社KINTOの調査によると、東京都に住むZ世代(18歳から25歳)の約60%が「若者のクルマ離れ」を感じているという。

 同時にこの調査では、東京都以外の地方在住の同世代の意識についても明らかにしている。こちらは東京都内の若者たちとは逆。約65%がクルマ離れについて「あまり感じない」「まったく感じない」としている(出典:株式会社KINTO)。

 この結果を見る限り、世に伝えられるクルマ離れ、とりわけ若者のそれとは、鉄道各種、バスといった公共交通網が整備されており、かつ駐車場代など車を維持するうえでのコストが嵩む東京都内に限った話ではないだろうか。