「クラシック音楽離れ」も実は眉唾
若者の半数以上が興味を抱く現実

「まるで淑女とステップを踏んでいるよう…」クルマ好きの若手作曲家を陶酔させた、最新フェアレディZの乗り心地【試乗記】松尾賢志郎(まつお けんしろう)
作曲家・ピアニスト

 同じく「○○離れ」の中でも音楽、とりわけクラシック音楽は、誰言うとなく「離れ」が進んだものと捉えられがちである。そうした人たちの言い分は、曰く「難しい」「格式張っている」「取っつきにくい」などなど、その理由を挙げればキリがない。

 だが、これも根拠のない風聞、思い込みと言わざるを得ない。今、クラシック音楽に興味がある人の割合は、10代に限ると48%、20代では51%、30代だと44%と、「離れが進んでいる」とは言い切れない実態が浮かび上がっている(出典:LINEリサーチ)。

 これら車と音楽を見ると、よく耳にする「活字離れ」についても、果たして事実なのかという疑問が湧く。

 たとえば今、出版の世界では週刊誌や月刊誌の休刊(事実上の廃刊)ラッシュだ。新聞社系と呼ばれるそれに限っても、古くは2008年の『読売ウイークリー』(読売新聞東京本社)、近頃では2023年朝日新聞出版の『週刊朝日』がその役割を終えたことは記憶に新しいところだ。

 確かに経済産業省の「活字離れは本当か?」(2023年11月8日付)によると、「出版業は下落傾向にある」としている。しかし、このレポートは出版業が衰退しているとは言っていない。

《紙出版や書店数の減少など縮小傾向にあるものの、電子出版市場は、本の朗読を聞けるオーディオブックなどの新たなサービスもあり、今後も拡大することが予想されます。》(出典:経済産業省「活字離れは本当か

 こうして見ると、若者、そしてミドル、シニア層を含め、よく伝え聞く「○○離れ」とは、案外その実情に沿っていないものもあるだろう。

 ときに世の中には「人が悪い人」もいる。穿った見方をすれば、車、音楽、活字の楽しさをひとり占めしたい人が、「○○離れが進んでいる――」とデマを流すことで、その楽しみを他人から奪おうと思っているケースももしかするとあるのかもしれない。

 そうした実情を踏まえて、とかく「○○離れ」が進んでいると言われる車のドライビングを若手クラシック音楽家がレポートするのが、この記事の趣旨である。これを活字でお伝えする。日頃馴染みのない車、とりわけスポーツカーとクラシック音楽を通して、楽しみながら教養を磨けること畢竟だ。